【2つのテーマでディスカッション】
パネルディスカッションでは、対馬での海洋ごみの現状と取り組み、そして、海洋プラスチックを経済と結びつけて減らしていく取り組みについて、それぞれの立場から発表が行われました。
■session2『海洋プラスチックと循環経済』
▽サラヤ株式会社
代表取締役社長 更家(さらや)悠介氏
今回は企業の代表、NPO法人の代表、そして関西の経済団体の代表として参加しました。2019年のG20で大阪ブルーオーシャンビジョンが出された際、ビジネス界からも何かアクションを起こしていかなくてはいけないということで、NPOを立ち上げて活動を始めました。対馬には、実際に多くの海洋プラスチックが押し寄せていますし、世界のプラスチック使用量は、増加している一方です。この使用量を削減し、使い終わったプラスチックをきちんと回収していかなくてはならないのですが、その仕組みがまだできていません。そこを何とかしようと、対馬市などと連携し立ち上げたのが「ブルーオーシャン対馬」という会社です。私たちとしては、ビジネスという方法で社会に役に立つというスタンスでいて、この会社では、流れ着く海洋ごみと島で発生するごみを一緒に再資源化することを目指しています。たとえば、流木を炭にしたり、発泡スチロールを溶かして再利用するなどの計画を持っています。来年の大阪・関西万博に出展するパビリオンで、そのことを世界に発信していきたいと思っています。
▽ポハン産業科学研究院
主席研究員 ジョンソンウ氏
私たちは鉄鋼を作る企業であり、その中で出る副産物を再利用するための取り組みを行っています。韓国でも海藻が消える「磯焼け」が進んでおり、その中で注目したのが、海中の鉄分の消失です。鉄を作る際に「鉄鋼スラグ」という物質が出るのですが、そのスラグを海の再生に活用できないかということで研究を進めました。そこで生まれたのが、海藻の再生を行う漁礁です。2012年に韓国で行われた万博を機に、鉄鋼スラグを含んだコンクリート製の構造物を海に設置し、その後どのような変化をするのか9年に渡ってモニタリングを行いました。その結果、海藻類の定着が90%以上維持していることがわかっています。企業が排出するものを活用して、環境保全に取り組むという姿勢は、他の分野でもできる可能性を秘めています。大切なのは、一人一人が現状を認識し、循環社会の一員という意識を強く持つことだと思います。
◆共同メッセージを発信
シンポジウムの最後には、今後もこのような場を作ることによって、海洋環境の維持や持続可能な社会づくりの推進につながることを願う共同メッセージが採択されました。
共同メッセージでは「日米韓それぞれが持つ情報を共有することの重要性と、その情報を活用しながら循環社会を構築することを推進する」「深刻化するプラスチック汚染に対し、その問題を認識し、積極的に解決に向けた取り組みを行う」「海洋環境を守るため、このような取り組みに若い世代に積極的に参加してもらい、次の世代へこの取り組みを継承していく」ことが盛り込まれ、参加者が拍手で承認しました。
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