◆歯周病と全身疾患の関係(~お口の健康から全身の健康へ~)
尾崎歯科医院 尾崎 隆海
歯周病は歯周ポケット(歯と歯肉の間の溝)の中で細菌が増殖して、それらが炎症を引き起こして赤く腫れたり、出血したりする病気です。お口の中には300~400種類の細菌がいます。よく歯磨きをする人の口の中でも1000~2000億個の細菌がいて、あまり磨かない人はその倍以上の細菌がいます。
それだけ聞くとゾッとしますが、その中には善玉菌と悪玉菌、どちらにも変化する日和見菌といった菌種がいて、特に歯周病を悪化させる原因の細菌はこの中で数種類です。そしてその細菌が栄養とする1つが血液中のヘミン鉄という鉄分です。勿論、歯垢(汚れ)の除去は必要不可欠ですが、歯茎からの出血(炎症のサイン)をなくす事、出血しないように適切なお口のケアをする事で悪玉菌の働きを防ぎ、数を減らし歯周病を予防する事ができます。
一方、歯周病により炎症が起こっている部分では潰瘍が形成され、そこから細菌や細菌が出す毒素が血管を通して全身に運ばれます。同時に「炎症が発生していますよ」と身体の免疫機構に知らせる炎症性の物質も、血管を通して全身に運ばれ悪影響を及ぼすと言われています。これを「血行性伝搬(けっこうせいでんぱん)」と言いますが、これだけでは説明がつかない事が多く、近年では唾液として飲み込んだお口の中の細菌が、腸内細菌に悪い影響を与えることで、全身に影響を及ぼすのではないかと考えられています。
また炎症性物質は、血糖値を下げるインスリンの働きを低下させ(糖尿病)、早産・低体重児出産、肥満、血管の動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞)にも関与しています。また、歯周病菌のなかには、誤嚥(ごえん)により気管支から肺にたどり着くものもあり、高齢者の死亡原因でもある誤嚥性肺炎の原因となっています。
最近では、大腸がんの人の便の中には、健康な人の便より、口の中の歯周病菌が多数存在している事も研究で分かってきており、がんの発生や進行に大きく関与している事も分かってきています。
歯周病の予防・治療を行う事で、全身の様々な病気のリスクを下げる事は健康寿命を延ばす事にもつながります。
日々の歯磨き・口腔ケアを見直し全身の健康につなげましょう。
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