◆ものが歪んで見える?
・すが眼科 菅 英毅
眼をカメラに例えると、フィルムにあたる部分を網膜といいます。その中心の光が集まる部分を黄斑部といいますが、物を見る上でとても重要な部分です。
黄斑部は物を見るための視細胞が集中しているため、この部分に異常があると、ぼやけて見えたり、見ようとする物が歪んで見えたり、線が曲がって見えたりと視力や視機能が大きく低下してしまいます。
症状が片方の眼だけに現れた場合は、よく見えるもう一方の眼でカバーしてしまうため、なかなか気づかない事があります。そのため、時々片眼をつぶって一方の眼だけで新聞やカレンダーなどを見て、見え方に異常がないか確かめる必要があります。縦横に線が入った格子状のチェックシートを使うとよりはっきりと自覚することができます。
原因としては、高齢者に多く見られる、加齢により黄斑部に新生血管という異常な血管が発生して機能が障害される「加齢黄斑変性症」、黄斑部に付着している膜が厚くなって黄斑部にしわができる「黄斑前膜」、膜が引っ張ることで黄斑部に穴が開く「黄斑円孔」、ストレス等が原因で黄斑部に水が溜まる事で起こる中年男性に多い「中心性漿液性網脈絡膜症」等様々な眼底疾患で発症します。また、「糖尿病性網膜症」、「網膜静脈閉塞症」等で網膜血管の血流が障害された場合でも黄斑部に浮腫を起こし、同様の症状が出る事があります。
これらの疾患にはそれぞれ治療法があり、「加齢黄斑変性症」では障害のもととなる新生血管の発生を抑える抗VEGF阻害剤を眼の中に直接注射する治療を行います。「黄斑前膜」、「黄斑円孔」では網膜に張り付いた膜を外科的に除去する硝子体手術を行います。また、レーザー光線を用いる治療や、症状が軽い場合は血液循環を良くする内服薬で経過をみる事もあります。この様に薬物療法、手術療法などをそれぞれの疾患や症状に合わせて選択して行います。しかし、すでに進行してしまった例や、発症してから長期間経過したものでは治療しても改善しにくくなる事があり、やはり早期発見、早期治療が大切です。
これらの疾患だけでなく、白内障、緑内障などで視力に変化が現れた際もその症状に早く気づく事ができますので、時々は片眼だけで見て、見え方をチェックしてみて下さい。
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