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特集 物語を今に伝える 西海市の国指定文化財(2)

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長崎県西海市

◆ホゲット石鍋製作遺跡
石鍋とは、平安時代末期~室町時代に使われた滑石(かっせき)で作られた石の鍋のこと。
滑石は鉱物でありながら人の爪で傷がつくほど軟らかく加工が容易であり、そのうえ耐久力が高く丈夫で、保温性も高いという特性があり、まさに石鍋にうってつけの素材でした。西海市の山中には滑石層の露頭(ろとう)が多かったことから、当時は全国随一の生産地として、西海市から全国各地へ石鍋を輸出していました。その中で最大級の遺跡がホゲット石鍋製作遺跡です。
※ホゲットの名称は、穴を「ほがす」という方言や遺跡周辺の字名「ホゲットウ」に由来していると考えられています

ホゲット石鍋製作遺跡は、古代末から中世にかけて厨房具として使用された滑石製石鍋の製作遺跡として、当時の生産活動と流通を考える上で欠くことのできない貴重な遺跡と評価され、1981年に石鍋製作遺跡としては日本で唯一の国史跡に指定されました。
遺跡は雪浦川の中流(西海市大瀬戸町瀬戸羽出川郷)の山塊に11か所の工房跡として密集し、その規模は日本最大級。後世の人工物は構築されておらず、石鍋製作の操業を停止した当時の姿が色濃く残されている貴重な遺跡です。
工房跡の滑石層には、石鍋製作の石鍋粗型(そけい)の取り残しが認められ、第6工房跡の発掘調査では石鍋原形から完成間近の遺物が出土しており、これにより石鍋製作工程の復元が可能となりました。
12世紀以降に生産された鍔付(つばつき)石鍋は、北は青森から南は沖縄まで、ほぼ日本全域で出土していますが、近年では南西諸島で大量の石鍋が確認され注目されています。その石鍋の大量消費を支えたのは西彼杵変成岩帯の大規模な滑石鉱床(こうしょう)でした。消費地での石鍋の流通と消費の実態解明を進めるためにも、ホゲット石鍋製作遺跡を今後も保全し、語り継いでいく必要があります。

《ホゲット豆知識》
平安末期には石鍋4個=牛一頭くらいの価値を持っていた!

◇人と人、地域と地域の繋がりを大切に。
運営会社の有限会社山﨑マーク代表 山﨑秀平(やまさきしゅうへい)さん
人と人、場所と場所との繋がりのきっかけ作りの場所、カフェ「HOGET」を運営。

ホゲット石鍋製作遺跡に由来し、「ほしいものは、つくる」という、西海の暮らしに根付いた名前を持つ『HOGET』。店内には、カフェやレンタルスペース、民泊事務所があり定期的にイベントも行っています。西海市には魅力的な人・物・場所が多数存在していますが、その魅力を西海市内外へ発信するのがなかなか上手くできていませんでした。
そこで、魅力を発信し、人と人とが繋がるきっかけとなる場所として、HOGETを活用しています。
自分たちが楽しみながら、西海市のさまざまな魅力を市内外へと広めていく、まさにホゲットの器のように、大きくさまざまな物を受け入れる空間になれればと思います。

◇受け継がれる歴史を地域で守り続けたい。
特定非営利活動法人 雪浦あんばんね代表 渡辺督郎(わたなべとくろう)さん
西海市、特に雪浦にある貴重な地域資源の保護および発信の活動などを行っている。

西海市には、多くの石鍋製作遺跡が存在しています。1981年にホゲット石鍋製作遺跡が唯一の国史跡に指定されてから40年が過ぎましたが、認知度は残念ながら低いままです。一千年前に、製作されていたノミの跡が残っている、全国でも貴重な遺跡となっています。
今後は、西海市とともにこの埋もれた貴重な地域資源を保護し、どう活かしていくかが我々の課題です。
石鍋の歴史は、まだまだ謎に包まれていますが、そこに歴史のロマンを感じています。私たちが暮らす西海市に存在するこの遺跡を通して、子供たちや地域の皆さんが、その歴史に想いを巡らせ、語り継いでいってほしいと思います。

◆七釜鍾乳洞
国指定天然記念物「七釜鍾乳洞」は、西海市西海町中浦北郷一帯に分布する複数の洞窟群の総称です。現在観光洞として公開されている「清水洞(しみずどう)」は、総延長約1,600メートルのうち、約250メートルが観光コースとして見学できます。また、清水洞のほかに2,000メートルを超える「龍王洞(りゅうおうどう)」、1,000メートルを超える「淵ヶ洞(ふちがどう)」など、35の洞窟が確認されています。七釜鍾乳洞の指定範囲は西海町中浦北郷の5つの字にまたがる広大な地域です。教育委員会では文化財の保護と住民の皆様の生活との調和を図るため「西海市天然記念物七釜鍾乳洞天然記念物保存管理計画」を策定して管理を行っています。

▽七釜鍾乳洞の形成
日本にある鍾乳洞の多くは、約3億~約2億5千万年前(古生代)の炭酸カルシウムを主成分とする石灰岩(せっかいがん)を母岩とするのに対し、七釜鍾乳洞は、約3,400万年前(新生代)の比較的浅い海の石灰藻球(せっかいそうきゅう)(藻の化石)を含んだ石灰質砂岩にできた洞窟であり、母岩が比較的新しい年代にできた希少性が評価されています。

▽七釜鍾乳洞の特徴
清水洞内の気温は年間を通じて16℃前後で安定しており、夏は涼しく、冬は温かく感じることが特徴です。また、清水洞では観光コースのほかに、ヘルメット、ヘッドライトを着用して入る探検コースがあります。美しい「石筍(せきじゅん)」や「つらら石」を見ながら水が流れる狭い空間を進むと冒険気分が味わえます(詳しくは、西海市観光協会七ツ釜鍾乳洞事務所にお尋ねください)。
【電話】33-2303

《鍾乳洞豆知識》
鍾乳石が1センチ成長するのにおおよそ100年かかる!

▽西海市文化財一覧

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