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長崎県立大学 シーボルト校研究紹介 Vol.44

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長崎県長与町

長与町に立地する長崎県立大学シーボルト校。すぐ近くの大学でどのような研究が行われているかをシリーズで紹介していきます。

◆環境に適応するためのヒトの行動の研究(感染症を例に)
看護栄養学部 栄養健康学科
竹内昌平 講師

ヒトに限らず動物の行動の基本的な機能は、個体(自己)の維持(食物を摂取することや危険を避けることなど)と個体群(種)の維持(配偶者を獲得することや子孫を養育することなど)とされています。このようなヒトの行動は、その発現機構や発現させる心理面・社会面、あるいは個人・社会への影響という視点から多くの関心が持たれてきました。私は、その中でも環境に適応する機構としてのヒトの行動に興味を持っています。今回は、特に感染症の流行から身を守るための行動に関する研究を紹介します。

<感染症の流行から身を守る>
2019年末から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が頭を悩ませています。2020年3月にはWHOがパンデミックを宣言し、4月には国内で緊急事態宣言がなされました。このような緊急事態宣言などは、非医学的介入(NPI:Non-Pharmaceutical Interventions)に含まれる社会的距離の拡大(Social distancing)と呼ばれています。社会的距離の拡大には、学校閉鎖や外出自粛など、まさにヒトの行動と呼べるものが含まれていました。
それでは、この社会的距離の拡大が感染症の流行に及ぼした影響はどのように調べれば良いでしょうか?今回は、「実効再生産数」と呼ばれる「感染症の数理モデル」という分野の中で使われる指標を用いることにしました。実効再生産数は、「感染症の流行中、ある集団において1人の感染者が生み出した2次感染者数の平均値」を意味しており、1を超えていれば、流行は加速しますし、1を切っていれば流行は収束に向かうとされます(図)。社会的距離の拡大の有無でCOVID-19の実効再生産数がどのように変化しているのかを調べることで、社会的距離の拡大というヒトの行動がCOVID-19の流行に与えた影響を調べることができます。実際に第5波までの流行を用いた研究では、ワクチン接種が不十分な状況においては、自宅から出る人数をコントロールすることで、ある程度COVID-19の流行を抑制する可能性が示唆されました。
ヒトの行動は、他にも様々な効果をもってヒトの環境への適応を助けてきました。今後もヒトの行動およびヒトを取り巻く環境について調べていきたいと考えています。

COVID-19の流行曲線と実効再生産数

図:COVID-19の新規感染者数と実効再生産数の推移
「情報:NHKまとめ」の新規感染者数のデータ(2021年4月~6月)から竹内が長崎県におけるCOVID-19流行の実効再生産数を計算したもの。報告された感染者数だけで計算しているので、報告が遅れてしまった影響や漏れている情報は全く加味されていないことに注意が必要。

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