長与町に立地する長崎県立大学シーボルト校。すぐ近くの大学でどのような研究が行われているかをシリーズで紹介していきます。
◆最期のときを自分らしく生きることを支援することへの探索
看護栄養学部 看護学科
石川美智 教授
皆さんは、最期どのように亡くなりたいですか。この問いは、自分が最期どのように死を迎えたいのかという問いですが、同時に最期どのように生きたいのかという問いでもあります。
人生の最終段階における医療・ケアでは、最期まで本人の意思を尊重することが重要とされています。最近では、人生の最終段階にある患者が治療・ケアを受ける際、患者や家族に対して延命治療を行うか否かを問われるようになりました。延命治療とは、「何らかの治療行為を行わなければ死に至るはずのものを、生きながらえさせるための治療」のことを意味します。延命治療には、心臓マッサージや人工呼吸器の装着、輸液や栄養管理などが含まれます。
私は、人生の最終段階にある患者や家族への看護に関する研究を行っています。現在は、維持血液透析患者の開始見合わせや中止時の意思決定支援に関する研究に取り組んでいます。諸外国では透析の開始見合わせや中止は、適切な治療の選択肢として認識されていますが、国内では殆ど浸透していません。そのため皆さんは、中止すると短時間で死に直結する心臓マッサージや人工呼吸器の装着といった心肺蘇生に比べ、透析治療を延命治療としてイメージしづらいかもしれません。しかし、治療中止による生命短縮に直接関与するという点で、透析治療も延命治療に含まれます。
国内の維持血液透析患者数は年々増加し、透析患者の約8割が65歳以上という世界でも類をみない超高齢透析社会が到来しています。高齢化の進展により、重篤な合併症や認知症を有する方が増加しています。そのため、今後高齢透析患者の判断能力や自己決定能力が低下した際に、自分の意思をうまく伝えられない状態になる可能性が大きくなることが懸念されています。
患者の意思や生き方を最期まで尊重することを大切にし、人生の最終段階で最善の看護が提供できるよう今後も探索を続けていきます。
▽長与町役場作成の『終活ノート』(無料)
「もしもの時」が訪れた時のために、自分の意思を記載しておくことができます。延命治療などの医療に対する自分の意思について記載できるようになっています。
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