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長崎県立大学 シーボルト校研究紹介 Vol.39

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長崎県長与町

長与町に立地する長崎県立大学シーボルト校。すぐ近くの大学でどのような研究が行われているかをシリーズで紹介していきます。

◆抗がん剤誘発性味覚障害に対する食嗜好に着目した栄養ケアの確立に向けて
看護栄養学部 栄養健康学科
花村衣咲 助教

日本人の2人に1人は生涯のうちに「がん」に罹患する可能性があり、早期発見および早期治療の重要性が指摘されています。がんに対する治療法は様々ですが、その1つに抗がん剤を用いた治療法があり、一般的に化学療法と呼ばれています。化学療法はがんに対する主作用だけでなく、副作用をもたらすこともあります。しかし、発症頻度の高い悪心や嘔吐の症状に対しては、制吐剤やこれらの副作用が少ない分子標的薬が上市されたため症状は軽減傾向にあります。また、その他にも発症頻度が高い副作用として味覚障害があります。私たちにとって「食」は、生命維持に必要な栄養補給としての役割だけでなく、幸福感や生きがいをもたらす重要な要素です。しかし、現時点では味覚障害に対する対処法が確立されていません。そのため、嗜好性に配慮した栄養ケアの確立が必要ですが、味覚障害はその症状が多様であること、さらに味覚障害を有する患者様と味覚障害のない方が美味しいと感じる味には乖離がみられることもあり、栄養ケアの確立を困難化しています。
そこで私は、「抗がん剤治療によって味覚障害を発症した患者様がどのような食事を好むのかを数値化し、さらにその数値が味覚障害の症状によってどのように異なるか」を明らかにするための研究を実施しています(図1)。この食の好みを数値化する方法として味覚センサーを使用しています。味覚センサーとは、ヒトの舌を模倣して設計された機器であり、様々な食品・医薬品などの「味」を数値化することができる分析装置です。この味覚センサーを使用して、味覚障害のある患者様の好む甘味、塩味、苦味、酸味、旨味、渋味などの呈味成分の量やバランスを分析し、患者様の味覚障害の症状別にその特性を明らかにする研究を進めています。
この研究を通じて、味覚障害のある患者様が少しでも食事を苦痛なく楽しむことができるような栄養ケアの実現化を医療機関と提携して目指していく予定です。

※(図1)は本紙P.28をご覧下さい。

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