長与町に立地する長崎県立大学シーボルト校。すぐ近くの大学でどのような研究が行われているかをシリーズで紹介していきます。
◆自由な発想による数理的造形
情報システム学部 情報システム学科
金子照之 教授
この春、神戸芸術工科大学から長崎県立大学に来ました。私は数理的造形の抽象的CGを描いており、研究者というより、アーティストかなと思っています。数理的造形は数学的手順によって生成されるアートで、自作プログラムで数学と芸術を融合させたような画像を描くのは楽しいです。簡単な数式を再帰的に繰り返して描くフラクタルやカオスを知っていますか?フィボナッチ数列のように簡単な数式の出力値を入力値にして、再帰的に繰り返すと有機的な形が生まれてくる不思議、それを描くには膨大な量の計算が必要で、コンピュータならではの造形シミュレーションをしているような気分になります。図1は私が考案した疑似三元数の関数でドーナツ状の形を変換して作ったフラクタルです。
「簡単な数式」を「でたらめに紙を折る」こととして、紙をでたらめにどんどん折り続けたらどんな折れ線ができるか?実際に紙を折り続けると、折るたびに紙が厚くなり、だんだん折り難くなり、折れ線は不鮮明になり、折ってない部分には歪みによる余計なシワが入ります。たぶん新聞紙だったら9回ほどで限界、強引に折ったら紙が裂けてしまうかもしれません。ちなみに一般的な新聞紙の厚さは0.125mmほどらしく、仮に42回折り続けたら約55万km、地球から月までの距離より長くなり、倍増現象の凄まじさがわかります。造形シミュレーションしてみたら、繊細な左右対称の構造が折り込まれた画像ができました(図2)。
自由な発想で描画アルゴリズムを考案して、プログラムを書き、どんな画像ができるのか観察し、アルゴリズムやプログラムを調整して新たな画像を探っていきます。コロナ自粛生活中、数学系YouTubeを大量に視聴し、数理的造形に利用できそうなことは無限にあるようで、数学の奥深さに魅了されました。学生たちと一緒に新たな数理的造形を開拓し、様々なコンペに応募していきたいと思っています。
※図は本紙P.27をご覧下さい。
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