◆お酒と肝臓
▽アルコールは人体に有毒
肝臓はアルコールを全力で無毒化して体外に排出しようとします。アルコールはアルデヒド脱水素酵素などにより、最終的に水と二酸化炭素として排出されます。しかし、遺伝的にアルデヒド脱水素酵素の働きの弱い人は、すぐに赤くなったり、ひどい頭痛が起こったりします。肝臓は最優先でアルコールの処理をするため、本来の働きができず、肝臓に中性脂肪が溜まり脂肪肝となってしまうと、インスリンが効きにくくなり、糖尿病が発症したり悪化したりします。
▽肝硬変の原因の第一位
さらに進行すると、だんだん肝細胞も傷つき肝臓が硬くなっていきます(肝硬変)。日本肝臓学会によるデータでは、日本における肝硬変の第一位の原因はアルコールです。
昔から「酒は百薬の長」と言われ、適量の飲酒は健康によいと言われてきましたが、最近では、世界保健機関(WHO)が、少量でもがんのリスクが増すため、飲まないことを推奨しています。ただ、適度なアルコールは、リラックス効果や円滑な人間関係の形成に必要だとも思います。
▽適量のアルコールとは
厚生労働省では、1日平均純アルコールで約20g程度を適度な飲酒としています。20gのアルコールとは、ビールなら中瓶1本(500mℓ)、日本酒なら1合(180mℓ)、ワインでは2杯(240mℓ)くらいです。物足りないと思う方もいると思いますが、これが健康を害さない量です。
▽健康のために適量を
アルコールは、肝臓病、膵炎、脳血管障害、がんなどの原因となり、さらに依存症の危険もあります。少量であれば高揚感をもたらしますが、さらに飲むとまず大脳を麻痺させ、理性・判断力が低下し、途中で止められなくなったり、飲酒運転など危険な行為を制止できなくなったりします。最後には、呼吸までが麻痺し死に至ります(急性アルコール中毒)。
飲みすぎにつながるやけ酒は厳禁です。ストレスに対しては、飲酒以外での気分転換(運動、趣味など)をすることが大事です。適量を守り、楽しく飲みましょう。
▽日本における肝硬変の原因
出典:日本肝臓学会「肝硬変の成因別実態調査」
2023年第59回日本肝臓学会総会発表
問合せ:地域医療政策室
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