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自治体の皆さまへ

想いをつなげる 未来の平和のために

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長野県伊那市

■戦争を知る、聞くということ
平和ための信州・戦争展
上伊那地区 実行委員長 宮下与兵衛(みやしたよへえ)さん

今年も8月15日に「終戦の日」を迎えます。終戦から79年が経ち、戦争当時の話を体験者ご本人から聞く機会が失われようとしています。記憶の風化が危惧される中、いかにして語り継いでいくか。
今回は上伊那で9年ぶりに開催される戦争展の実行委員長を務める宮下与兵衛さんに、戦争を語り継ぐことや戦争展に対する想いを伺いました。

▽平和を問うた沖縄
高校の国語教員になってすぐの頃に沖縄に行く機会があり、沖縄戦の歴史と米軍基地の実態を見て非常にショックを受けました。地上戦になったのは日本では沖縄だけです。軍によって自決に追い込まれた住民もでており、住民の4人に1人が亡くなったと聞き、戦争の悲惨さを感じました。では今が平和かというと、米軍基地がたくさんあり、戦争が身近にあるといえます。戦争はずっと続いているわけです。その体験から、平和教育活動を行うようになりました。最初に全国の平和教育の研究会に入りました。そして戦争展には第1回目から関わり、「非核平和都市宣言をさらにすすめる伊那市民の会」も立ち上げから38年間続けてきました。

▽高校生平和ゼミナール
教員として下伊那にいたときに、高校生と一緒に戦争体験者を訪ね歩きました。例えば満蒙開拓の残留孤児の帰還運動をしたご住職、731部隊の医師の助手をしていた方、被爆者、満州から引き揚げてきた方などの話を伺いました。
上伊那に転勤してからは、登戸研究所についての調査をはじめました。登戸研究所とは、神奈川県川崎市にあった旧日本陸軍の研究所で、生物化学兵器や風船爆弾、偽札製造などの研究開発を行っていたところです。まず、疎開した研究所が上伊那を中心にして存在していたことを突き止めました。しかし、研究所の元研究員たちはかん口令が敷かれていたので、一切話してくれません。赤穂高校の木下健藏先生と高校生たちと足しげく通うことで、高校生になら話してもいいということで、段々と研究所の全貌がわかっていきました。そして、1991年に高校生が登戸研究所について本にして発表し、初めて世間に広まりました。これまで歴史学は文書を基にしていましたが、聞き取り・オーラルヒストリーにも価値があると見直された、とても意義のある活動でした。

●戦争展とは
「平和のための信州・戦争展」(以後、戦争展)は、1991年から始まり、県内4地域を持ち回りで開催され、今年で35回目を迎えます。上伊那で行われる今回の戦争展では、日本の過去の戦争にかかわる上伊那地域の被害、反戦抵抗の出来事の紹介、戦争体験者による講演会などが企画されています。また、過去の戦争の展示とともに、現在も続くウクライナやガザでの戦争、「新しい戦前」ともいわれる日本の状況を見つめ、子どもや若い世代の皆さんも一緒に「戦争と平和」について考える平和イベントです。

○第35回 平和のための信州・戦争展
期日:9月28日(土)・29日(日)
会場:県伊那文化会館小ホール

○戦争遺品をご提供ください
戦時中の千人針や教科書などの戦争遺品、軍隊や軍事に関する資料をお持ちの方は、展示しますので、ぜひご提供ください。

お問い合わせ先:戦争展上伊那地区実行委員会
【電話】080-3704-1084(事務局宮下)

■そして、戦争を伝えていく
▽悲惨な戦争を繰り返さない
その後、聞き取りをさせていただいた方は亡くなってしまいました。これからは、戦争を伝えていくことが大事になっていきます。伝えるための遺品や記録は、それを活用したり見たりする場が必要です。その場というのが今回の戦争展だと思っています。新しい研究内容も加えながら、繰り返し伝えていくことが、平和につながっていきます。
阿智村の満蒙開拓平和記念館では、高校生が来館者に展示内容などの説明をしています。高校生たちが、まず自分たちで体験者の話を聞いたり勉強したりすることで、今は自分たちの口で説明し、伝えています。平和教育から新たな語り部が育っており、想いがつながっていくと感じます。

▽想いをつなぐ
最後に、戦争展は子どもにとって刺激が強いと思うかもしれませんが、子ども向けの展示もあるので、ぜひ小さな手をつなぎながら親子で一緒に見てあげてください。興味の扉を少しずつ開いていくことで、平和への想いがつながっていくのではないでしょうか。

●黙とう
・広島平和記念日…8月6日(火)午前8時15分~
・長崎原爆の日…8月9日(金)午前11時2分~
・戦没者を追悼し平和を祈念する日…8月15日(木)正午~

●原爆パネル展
原爆の悲惨さを多くの方に知っていただくため、原爆に関するパネルの展示や、「焼き場に立つ少年」の写真を掲載したカードの配布を行います。
期間:8月1日(木)~15日(木)
会場:伊那図書館2階

●軍事郵便でたどる戦争の記憶
出征兵士と家族の肖像写真や、戦地の兵士から国内の家族に宛てた軍事郵便を中心とした実物資料を展示します。
期間:7月20日(土)~8月25日(日)
会場:高遠町歴史博物館

問合せ:企画政策課 企画政策係

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