■重要な農業用水六道井筋について
農業委員 伊東基博(いとうもとひろ)
▽一、井筋の歴史
「我田引水」と言う言葉がありますが、農業経営にとって欠くことができない農業用水の多くは、河川から導く井筋となっています。
高遠には、「六道井筋」と言う藤沢川からの取入口があり、原形は江戸時代に高遠藩藩主内藤頼寧により造られたものです。
高遠は、山裾に広がる町部と急峻な地形が続く村部からなりますが、伊那の地を合わせて高遠藩の所領などであり、財政難を克服するため新田開発に力を注ぎ用水路の整備がされたと書物にあります。
江戸時代からの井筋は、現在でも五井筋が名を残し、(1)六道井筋(2)伝兵衛井筋(3)小原井筋(4)大沢川水系井筋(5)月蔵井筋があります。
▽二、六道井筋の大きな役割
六道井筋は、一番井筋と呼ばれ、高遠町長藤区野笹集落の石見堂下から水をとり、弥勒〜的場〜鉾持〜芦沢〜笠原を経て六道原に至る約10kmの延長となっています。
その目的は、用水沿線の村々の開田はもとより、六道原の東入口に2700平方メートルとなる大きな堤(通称・六道堤)を築き、六道原の原野を水田に変え、段丘下の大島、川手などの住民を移住させ、新田村を作るといった壮大な計画でありました。
▽三、現在の六道井筋と六道堤
現在も六道井筋の水は絶えず六道堤には豊富な水があふれています。
春になると堤の周囲に植えられている桜が満開ともなれば、水面に絶景を映し出し、多くの家族連れや写真愛好家が訪れる観光スポットにもなっています。
このシーズンが過ぎれば、いよいよ各地で田植えが始まり、美しい田園風景が広がり、これも絶景となっています。
六道井筋・六道堤は、大切な農業文化的な財産であるので、伊那市の財産として後世に引き継がれることを願っています。
▽四、六道井筋の管理
六道井筋の管理は、地元役員が一年を通して管理に当たっているとのことです。
特に、春には井ざらい等を行い備え、用水が必要となる田植え時期になると、毎朝取入口に通い、水門等管理に当たっているとのことで、関係する皆様へ敬意と感謝を申し上げ、今シーズンの無災害を願っています。
▽五、今後のことを想う
世界情勢は、新型コロナウイルス対策は一区切りしましたが、各地の紛争等により原油価格・物価高騰などが悪化しています。
国内を視ると、社会情勢の変化から農業を取巻く諸課題が山積し、稲作からそば・野菜等への転作、農業従事者の高齢化や担い手不足等が影響し、遊休農地化もあり、「人と農地」にかかる問題が深刻になっています。
6月の国会で、食糧安全保障を基本理念に据えた「食料・農業・農村基本法」改正法が成立しました。この改正法が基に、持続可能な地域農業を目指すため、農振法、農地法、農業経営基盤促進法も改正となり、施策が展開されてくるので、少々期待をしているところです。
最後に、「お金を出せば、食料をいつでも安く買える時代は終わった」と思っています。
農地付き中古物件購入から始まる就農、週末農業や半農半Xなど、農業に携わる人が増えるための取り組みが必要であると思います。
これが進めば、大小様々な農業経営体となりますが、農地を使い(遊休荒廃せず)営農がされ、ひいては地域コミュニティの存続に繋がるものと関心があるところです。
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問い合わせ先:お近くの農業委員または農業委員会事務局まで
■衛星画像・ドローン画像を使用し業務を見直します
令和6年度から、衛星画像とドローン画像を活用し、米交付金にかかる作物確認、農地パトロール(遊休農地調査)を行います。
これにより、昭和50年代から始まった「転作現地調査」は形を変え、地区役員の皆様の負担を軽減できる予定です。
地区役員の皆様におかれましては、長きにわたり対応いただき有難うございました。
農政職員にとっては、『夏の風物詩』的な行事で、地区のほ場や事情を確認でき、役員の皆様との交流など貴重な勉強の場でありました。
使用する業務:
・作物や遊休(荒廃)農地など現年の状況確認
・補助金交付金に必要となる作図
期待される効果:
・現地調査にかかる諸経費、人件費の削減
・年次記録を残すので、農地、山林、住宅などの状況、現在と見比べ街の変化を調べることができます。
※詳細は、本紙またはPDF版をご覧ください。
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発行:伊那市農業委員会
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