■もしものときの自分の希望を家族と共有する
「塩筑医師会・塩尻市版リビングウィル」の制作の中心となった塩筑医師会の椎名裕之副会長に、リビングウィルを書くときのポイントなどについて聞きました。
[塩筑医師会 副会長 椎名 裕之さん(しいな医院)]
Q.家族らと今後の人生を話し合うのは、いつが良いのでしょうか?
A.今後の人生について話し合うタイミングはいつからでも良いと思っています。平穏に生活していれば、自分や家族が亡くなった時のことなどを考えたくない人もいると思いますが、最期の時は誰にでも訪れます。元気でいる今だからこそ、自分の人生観や死生観などを考え、家族らと共有しておくことがとても大切です。
Q.リビングウィルを作っておくと良い点を教えてください。
A.救急の場面で、家族は、少ない情報や短い時間で治療方針の選択を迫られます。治療を尽くしても救命できなかったとしたら、「自分の判断は本当に良かったのか」と家族が後悔することがあるかもしれません。このような場合でも、リビングウィルがあると、家族らは本人の希望に沿って決められるので、決断をした家族らの心理的な負担の軽減につながります。
Q.人生会議の注意点はありますか?
A.1回の人生会議ですべてを決める必要はなく、何回も話し合い、本人と家族が納得できるものを作ってください。リビングウィルは、事故や病気で自分の意思を伝えられない場合や、がんの終末期など治る見込みがないと判断された時を想定して記録しておくものですが、法的な拘束力はありません。
救命できる可能性があれば、医療従事者は懸命に治療を行います。患者さんの環境や病状によって治療方針も変わるので、その時に最善と思われる治療方針を選択することもあります。
Q.近親者がいない場合、誰と人生会議を行えば良いでしょうか?
A.治療を受けている病院の主治医、ケアマネジャーやケースワーカーなど専門的な知識を持つ人に相談することが良いと思います。介護施設を利用している場合は、その施設の職員など頼りになる人を普段からつくっておくと、近親者がいない場合でも話し合うことができます。
Q.かかりつけ医がいない場合、誰に署名をもらえばよいでしょうか?
A.リビングウィルに法的拘束力はないので、かかりつけ医がいない場合は、無理に医師から署名をもらう必要はありません。
ただし、かかりつけ医がいない場合は、市で行っている健診などを受け、受診をきっかけにかかりつけ医をつくるよう心掛けてください。
Q.最後に、リビングウィルを書く上で大切な点を教えてください。
A.まず、自分の意思を明確にしてください。家族の意見に流されず自分の意思で考えましょう。次に、家族と自分の意思を共有しましょう。緊急時に家族間で意見の対立が起きないよう、家族の意思を統一しておくと良いです。そして、終末期の医療について、自分の身に起こることを、自分も家族も知っておくことが大切です。これらの点を意識して書きましょう。
■突然やってくる「もしも」のために~リビングウィルの活用と心疾患への備え~
本市では、終末期についての講演会を毎年開催しています。今回は、リビングウィルの重要性、延命治療の概要や注意点などと併せて、高齢者に多い心疾患に対して重症化しない対策を医師の視点からお話していただきます。
日時:7月17日(水)午後2時~3時
場所:市保健福祉センター3階 市民交流室
講師:椎名 裕之さん(塩筑医師会副会長)
定員:50人(先着順)
参加費:無料
申し込み方法:電話または右のコード(電子申請)でお申し込みください。(二次元コードは本紙またはPDF版を参照してください。)
申込締め切り日:6月28日(金)
■思い出話も「もしも」の時の参考になる
施設を利用する家族と共に終末期に向き合う、訪問看護師にお話を聞きました。
[複合施設ハートフルはうす 大沢 友見さん]
訪問看護の仕事上、治療をしても回復が難しい人がいるご家族から、終末期について相談を受けることがあります。
終末期について考え、話し合う時にとても重要なことは、支援者側が聞きたいことだけを聞くのでなく、本人を主として考え、本人がどうしてほしいのか話を聞くことだと思います。周りの状況が変われば考え方も変わるので、一度で終わらせず何度でも話し合うことも大切です。
今後の人生を家族と話し合うきっかけの一つが、リビングウィルだと思います。この冊子をきっかけに普段から家族と話し、考えを共有してください。話し合う中で思い出話になることもあります。その思い出からどんなことを思い、考えたかを聞くと本人の考え方を知ることもでき、もしものときの参考になると思います。
リビングウィルは本人だけのものではなく、本人を思う家族のものでもあると思います。
問合せ:介護保険課介護相談係
【電話】0263-52-0280(内線)2133
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