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木曽漆器を学ぶ~若手職人編~木曽漆器のカタチ

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長野県塩尻市

5月25日(土)に行われた、若手漆器職人によるトークイベント「木曽漆器のカタチ」の中から、「新しい木曽漆器のカタチづくり」と「これからの産地のカタチ」の2テーマを取り上げます。

―皆さんが作る「新しい木曽漆器」への思いや、こだわりについて教えてください。
(岩原さん)
私は、建設業や金属加工、革細工などいろいろな仕事を経て職人になったので、それらの経験を生かした独自の漆器作りを意識しています。皆さんが「木曽漆器」と聞いて想像するのは器だと思いますが、まず私がオリジナルで作ったのは、財布などの革製品に漆を塗った物でした。革本来の柔軟性を損なわないように漆を塗る技術を開発し、通常の革製品に比べ若干の撥水性を持ちながら、ひと味違った経年変化を楽しめるのが特徴です。異素材への漆塗りが私の強みで、ギターやバイク、ヘルメットなども扱っていますが、木曽漆器ならではの伝統技法を意識的に取り入れています。
(小坂さん)
私は、ガラスに漆を塗る技術を開発した先代に続く形で、漆塗りガラス製品を現代の生活で扱いやすくする、リブランディングに取り組んでいます。例えば、透明なガラスのお皿の表面に漆を塗るのではなく、裏面に塗ります。そうすることで、フォークやナイフを使っても漆部分が傷つかず、洋食器として使うことができるようになります。また、ガラスの特性である光の屈折を利用して漆で絵を描くことで、テーブルに映る影が食卓に彩りを添えることもできます。デザイナーともコラボレーションしていて、日本の伝統をどこかに感じさせながらも暮らしの中で新鮮に映るような新しい漆の表現方法を追求しています。
(手塚さん)
私は蒔絵(まきえ)師なので、父が作った漆器に動物などをモチーフにしたかわいらしいイラストなどを絵付けしています。やっぱりパッと見て直感的に「かわいい」と思ってもらえれば、漆器を身近に感じるきっかけになるので。イラスト以外にも、漆器自体を黒や朱といった伝統的な色ではなく、カラフルなパステルカラーの漆で塗ってみたり、使う場面を想定して面白い仕掛けを入れたりすることも意識しています。お店では、小さな子ども向けの漆器も扱っているので、名入れをしたり、最近では、リクエストにお応えして恐竜のイラストを入れた箸を商品化したりしました。

―これからの産地をどうしていきたいですか。
(小坂さん)
現在、木曽漆器の組合の登録事業者は約100件で、そのうちのほとんどは60代~70代の作り手が中心。その下の世代は売り手が多く、20代~40代の職人は10人ほどしかいません。このままいけば、一気に職人が不足する危機を迎えてしまいます。自分たちがそれをどう乗り越えるかを考えると、漆器に対する価値を高めていくしかないと思います。時代の流れを読みながら、ただ新しい物を作るのではなく、漆器の価値や技術の価値が背景としてあることをお客さまに伝えるということを、作り手自らがしていかないと生き残れないと感じています。消費の形を変えていく必要があります。
(岩原さん)
いろいろな仕事が機械化していますし、AIによる自動化も進む世の中にあって、この業界は本当に大変。手仕事はより厳しい状況になりますが、手仕事でしか表現できないものも必ずあります。小坂さんや手塚さんの作品にもみられる自由な発想がまさにそれで、いつも勉強させてもらっていますね。私も自分にしかできない仕事を突き詰めて、産地に貢献したいという思いが強いです。魅力がある産地には人が集まり、作り手になりたい人も出てくると信じています。
(手塚さん)
木曽平沢を訪れてくれる人が、そこで思い出となるような時間を過ごせることが大切だと感じます。今は物を買うだけの時代ではないので、自分で作る体験を提供して作り手とお客さまが思いを共有することも、漆器の価値を知ってもらう上で大切だと思っています。
(小坂さん)
この産地では、昔は同世代で技術の競い合いをしていましたが、今は技術+商品開発の競い合いが重要です。同世代で刺激を与え合いながら切せっさたくま磋琢磨して産地を盛り上げていきたいです。

・用語解説
蒔絵…漆で絵や文様を描き、漆が固まらないうちに金・銀などの金属粉を蒔いて表面に付着させ装飾を行うこと
木曽春慶、木曽堆朱、塗分け呂色塗…経済産業省指定の伝統的工芸品「木曽漆器」に使われる三技法

■切磋琢磨して産地を盛り上げていく
[丸嘉小坂漆器店 三代目 小坂 玲央さん(木曽平沢)]
◇Profile
ガラスに漆を塗る技術を開発した先代に続き、「美しく、誠実で、ドキドキさせる漆ガラス」をコンセプトに木曽漆器の産地で新しい挑戦を続けている。

■自分にしか出来ない仕事を突き詰めたい
[美空うるし工芸 代表 岩原 裕右さん(木曽平沢)]
◇Profile
自分にしか作れないものを作りたい、若い人にも漆製品を手に取ってもらいたいという思いで、革製品やギターなど新しい素材に着目して製品化している。

■木曽平沢で思い出の時間を作り出す
[ちきりや手塚万右衛門商店 蒔絵師 手塚 希望さん(木曽平沢)]
◇Profile
創業から約200年の歴史を受け継ぐ漆器店で蒔絵や絵付けを施す。伝統を守りつつ、時代に合わせた新しい感覚を大切にする漆器作りで木曽漆器の発展に寄与している。

■参加者インタビュー
・職人の話を聞いて、モノに対する考え方が変わりました!
・普段絵を描くのですが、絵に漆を取り入れてみたいです!

問合せ:商工課商工係
【電話】(直)0263—52-0871

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