自分の歯でおいしく食べられること。それは「生きる力」に直結しています。近年では、口の健康と全身の健康との関連が次々と明らかになってきています。健康な生活を送るためには、口の機能を維持することが欠かせません。全身に影響を及ぼす口の健康を考えてみましょう。
平成26年度から10年間、信州大学医学部と塩筑医師会、塩筑歯科医師会、塩尻市が連携協力し、「歯および口腔の健康と全身の健康状態との関連に関する研究」を行ってきました。その成果などについて信州大学医学部の栗田浩教授にお聞きしました。
■口腔内を唾液でチェック
市民の皆さんの健康寿命延伸を目指し、塩尻市の国保特定健診に併せて信州大学による歯科健診・唾液検査・歯科保健指導を行う中で研究を進めてきました。唾液を使った検査では、少量の水を口に含み、すすいでもらうだけで歯周病の有無が分かります。
■口の中を健康にすることが大切
40歳代以上の60~70%の人は歯周病に罹患(りかん)しており、日本人が歯を失う原因の約4割を占めています。歯周病菌が血液に侵入すると、全身に影響を及ぼすことがあります。
正しく歯を磨いて、「歯」というよりも、「口の中」の衛生状態をきれいに保つことが大切です。定期的に歯科健診を受け、口の中の健康状態や歯磨きの仕方をチェックしましょう。
■かむ力をつけて口の中を健康に
人間の基本である「食べる」こと。これにはまず「かむ力」が必要です。よくかんで食べている人はよくかまない人よりも健康という研究結果も出ています。1口30回はよくかんでゆっくり食べることや、舌の運動などをすることでかむ力・飲み込む力を付けると口の中の健康状態だけでなく、歯周病・メタボリックシンドローム・認知症・オーラルフレイルなどの予防にもなります。
■10年の研究で新たに発見したこと
10年間の研究データの蓄積により、口腔内の衛生状態が悪い場合に体に及ぼす影響について、新たに分かったことが五つあります。
これらは、厚生労働省からも注目されている貴重な研究結果です。
1.インフルエンザや新型コロナウイルス感染症の感染率が約2倍高くなる(グラフ参照)
2.体の免疫力に関係している
3.歯周病を治療することで糖尿病の数値が良くなる
4.誤嚥(ごえん)性肺炎に関連がある
5.歯周病とメタボリックシンドロームに関連がある
◇口腔衛生状態別の感染症感染リスク
出典:信州大学の調査結果から
■[信州大学医学部歯科口腔外科学教室教授 栗田 浩さん]
◆全国で塩尻だけの取り組みに感謝
10年間この研究を続けてこれたことは、何よりも市民の皆さんの協力があってこそです。本当にありがとうございます。この10年で多くの新しい発見があり、口の中の健康と体の健康状態に関係性があることがより分かりました。
全国の市町村でも、唾液による検査や研究を特定健診内で行っているのは塩尻市だけ。
ご協力いただいているこの研究は、塩尻市民だけでなく、日本国民のためになる重要なものとなりました。皆さんの健康のためにも今後も研究を続けていきますので、特定健診内で行う歯科健診や唾液検査に引き続きご協力をお願いいたします。
◆栗田教授からのアドバイス
▽子どものうちから身に付ける歯磨き習慣・食習慣
正しい歯の磨き方や、歯を磨く習慣は子どものうちから身に付けることが大切です。早期に歯磨き習慣を確立することで、大人になってからも口の中を健康的な状態に維持しやすくなります。
乳歯は永久歯に比べむし歯になりやすく進行も早いため、小さいうちは保護者が仕上げ磨きをして口の中をケアしてあげることも大切です。
また、子どもの頃から食事はバランス良く、よくかんで食べることを身に付けることは生活習慣病などの予防に重要です。
▽誤嚥(ごえん)性肺炎は予防できる!
誤嚥性肺炎とは、口の中の細菌が肺に入り込んで起こる肺炎です。高齢者がかかる肺炎のほとんどはこの誤嚥性肺炎です。皆さんの想像する一般的な肺炎とは違い、これは口の中を清潔にして健康に保ち、よくかむことなどを普段から意識していれば予防できるものです。
▽子どもの「仕上げ磨き」を動画でチェック
歯ブラシの選び方や、磨き方の基本など、「仕上げ磨き」が不安な人にピッタリな動画です。左のコード(市公式YouTube)でご覧ください。(二次元コードは本紙またはPDF版を参照してください。)
■歯科健診を受けましょう
◇さわやか歯科健診
お口の中を清潔にすることは、ウイルス感染症の罹患(りかん)リスクを下げることにつながります。この機会にぜひ受診してください。
対象:令和6年度中に20・30・40・50・60・65・70歳になる人
※対象者には受診券を送付しました。
期間:7年3月31日(月)まで
場所:市指定歯科医療機関
内容:問診、口腔内診査 など
料金:500円
持ち物:受診券、健康保険証または被保護証明書
◇妊婦歯科健診
お母さんの「歯の健康」のためだけではなく、生まれてくる赤ちゃんのためにも、安定期に入り体調の良い時に受診しましょう。
対象:市内在住の妊婦
※母子健康手帳と一緒に受診券を交付します。
場所:市指定歯科医療機関
内容:問診、口腔内診査、ブラッシング指導、歯科保健指導
料金:無料
持ち物:受診券、母子健康手帳、健康保険証または被保護証明書
◎どちらの健診も、市指定歯科医療機関に電話でお申し込みください。
問合せ:健康づくり課保健予防係
【電話】(直)0263-52-0858
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