希少動植物調査員からの報告(39)
今回は、たびたび栄村を訪れ、カエルやコウモリの調査をされている新潟県立西新発田高校の鷲尾和行先生から、村内に生息するコウモリについて寄稿していただきました。2回に分けて、コウモリの生態や村内の希少なコウモリの様子等について紹介していただきます。
皆さんは、コウモリにどのような印象をお持ちでしょうか?「怖い」「気持ち悪い」「血を吸う」「どっちつかず」「妖怪の化身」等々…。もしかしたら好印象の人は少ないかもしれません。
まずはじめに申し上げておきます。本州のコウモリはすべて食虫性(昆虫類を食べる)です!「血を吸う」種類(和名チスイコウモリ)は、日本には生息していません!!それは中南米の一部の地域に分布しているだけです。
コウモリ類は、現在の哺乳類の中ではネズミ類に次いで繁栄しているグループです。そして唯一、飛行できる哺乳類です。ほとんどが夜行性で、視力ではなく超音波の反響によって暗闇の中を飛行しています。
食性も多様です。昆虫類、小鳥や小動物、魚、花の蜜、果実、恒温動物の血液などを食料とするさまざまな種類が、寒帯以外の世界中に生息しています。
◇身の回りに暮らすアブラコウモリ
皆さんが夕方市街地で見かけるコウモリのほとんどが、アブラコウモリという種類でしょう。以下はアブラコウモリを例に、コウモリの生活を簡単に紹介しましょう。
アブラコウモリは、空を飛ぶ虫(蚊や蛾など)を食べます。飛びながら虫を食べるところは、ツバメと同じです。ツバメは益鳥として有名ですが、コウモリも同じように人にとっては益獣なのです。ツバメとは採餌の時間帯を「すみわけ」ていると言えます。
アブラコウモリは、秋にオスとメスが出会って交尾をし、翌年の夏に2~3匹出産します。
◇飛ぶことに特化した体のつくり
コウモリの「翼」は、実はヒトの手と同じ器官(相同器官といいます)です。なが~い指の間に皮膜があり、それが翼となって空を飛ぶのです。
空を飛ぶためには、体を軽くしなければなりません。よって、コウモリは自身の骨の中身を空洞にしています。また、飛ぶための胸の筋肉が鳥のように発達しましたが、それ以外の筋肉は極力減らしてきました。その結果、軽量化に成功したわけですが、足の筋肉がほとんどなくなり、多くの動物のように立つことが出来なくなりました。だから飛んでいない時は足の爪をひっかけて、逆さになってぶら下がることしかできなくなったのです。心臓や血液循環機能も特殊化させたため、頭に血が上ることもなくなったのです。
コウモリの指の間の皮膜は、水分が蒸発しやすいので、コウモリは大量に水を飲みます。夕方に池などでコウモリが、水面ギリギリに飛んでいるのを見かけた人もいるでしょう。これは水を飲んでいるのです。
コウモリ類は、栄村の希少動植物調査では全く手つかずの分野です。私たちのすぐ身近にまだまだ知らない自然の世界があることに驚きます。次回では、先生のこれまでの調査結果を基に、さらに栄村の希少なコウモリ等を紹介していただきます。
※写真提供:鷲尾和行先生
(栄村希少動植物調査員・涌井泰二)
※写真は本紙13ページをご覧下さい
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