希少動植物調査員からの報告(40)
前回に引き続き、新潟県立西新発田高校の鷲尾和行先生から、村内に生息するコウモリ類の様子やその魅力について語っていただきます。
今回も、前回に引き続き、アブラコウモリから話を始めましょう。
アブラコウモリは、昼は家屋の隙間などをねぐらとし、夕方から飛び始め、明け方ねぐらに戻ります。ただ、一晩中飛び回っているわけではなく、適当に休憩をします。その時はねぐらとは違う場所で休憩します。この場所を「ナイトルースト」と言います。よく学校の校舎の隅などにコウモリの糞(ネズミの糞に似ている)が落ちているのは、そこがナイトルーストである可能性が高いわけです。冬は冬眠します。
アブラコウモリ以外のねぐらも種類によって様々です。洞窟、樹洞、橋や建造物の隙間、暗渠など様々な場所をねぐらにしています。本州のコウモリ類は体が小さいので、1cmでも隙間があれば入り込めます。意外なところにもコウモリのねぐらがあるかもしれませんね。
◇栄村には希少なコウモリが!
さて、栄村にはアブラコウモリの他に、キクガシラコウモリ・コテングコウモリ(長野県:絶滅危惧I B類)の記録があります。両種とも主に森林に生息し、キクガシラコウモリは洞窟、コテングコウモリは樹洞をねぐらとします。
栄村には、もっと多くの種類が生息しているものと推測できます。それは、栄村の自然環境が多様で豊かであるからです。コウモリ相(どの地域にどんな種類がどれだけ生息しているかをまとめること)は、その地域の自然環境の状態を見極める重要な尺度です。コウモリ相が充実しているのは、すばらしい自然であることの証明です。また、コウモリ類には絶滅危惧種に指定されているものもあり、こうした種も今後栄村で確認される可能性は大きいでしょう。
私は2022年から有志の方々の協力で、独自に栄村のコウモリ相を調査しています。これまでに先述の3種類の他に、モモジロコウモリ・コキクガシラコウモリ・ユビナガコウモリ(長野県:絶滅危惧I A類)・ウサギコウモリ(長野県:絶滅危惧II類)の生息を確認できましたが、当然まだまだ調査不足です。
野外でのコウモリ類の正確な種類の同定は困難を極めます。写真だけで同定できる種類は少なく、捕獲して同定しなくてはならないことが多いからです。しかし、野生動物をむやみに捕獲することは法律で禁止されています。よって、なかなか調査が進まないのも事実です。
微力ながら今後も栄村の素晴らしい自然を後世に残すお手伝いをさせていただきたいと考えています。
いかがでしたでしょうか。皆さんがコウモリを少しでも身近に感じ、コウモリの保護とコウモリのすむ環境の保全を考えていただければ幸いです。
鷲尾先生、2回に渡り、大変ありがとうございました。わたしたちの身の回りには、まだまだ知らないことばかり!だからこそ、今ある自然を大切にし、後世に伝えていきたいものです。
※写真提供:鷲尾和行先生
(栄村希少動植物調査員・涌井泰二)
※写真は本紙15ページをご覧下さい
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