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暖冬!動植物への影響は?

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長野県栄村

■希少動植物調査員からの報告(41)

今年の3月初めに、気象庁からびっくりするニュースが発表されました。昨年12月から今年の2月にかけての冬は、気象庁が1898年に統計を取り始めてから2番目に全国の平均気温が高かったというのです。平年よりも1・27度も高い暖冬だったそうです。
今から夏の水不足や耕作への影響が心配されますが、山野の動植物へは影響がないのでしょうか?
ちなみに先ほどの気象庁のニュースでは、これまで最も冬の平均気温が高かったのは、2020年で1・43度も高かったそうです。2020年と言えば、この周辺でも里地では3月中に雪が消えてしまいました。
その年は、暖地にいるチョウやトンボが複数見つかった年でした。さて今年は、どうなるのでしょう?

◆ギフチョウの産卵標高が高まる?
2020年、野々海方面でギフチョウが産卵した最高地点は、我々の観察では標高1060m付近でした。
しかし、その後2021年~2023年の調査では、毎年約920m付近が最高となっていました。
今から40年ほど前の調査記録(「野々海・貝立の自然」1982年飯水教育会)を見ると、野々海方面のギフチョウの生息は、標高900m付近が境だったようです。ですから、2020年の我々の観察記録は、野々海方面では最高地点での産卵記録のようです。
暖冬の結果、ギフチョウが羽化する時期が早まるとともに、幼虫の餌となるコシノカンアオイなどの新葉が早く開くことが予想されます。そうすると、再び1000m以上の高地で産卵が見られるかもしれません。
また、これまでの調査で栄小学校や栄中学校、そして役場前の植え込みに移植した食草にも、翌春にすぐにギフチョウが産卵していました。
今春は、ギフチョウの活動が例年以上に活発になるかもしれません。皆さんの庭先でも見られるかもしれませんね。

◆分布を広げる暖地性の生き物
我々の調査が始まって今年で5年目となりますが、この間にも村内で、以前は見られなかった生き物が見つかっています。

◇ホソミイトトンボ
このトンボは、トンボの仲間では3種しかいない成虫で越冬するトンボです。もともと西日本が分布の中心でしたが、近年長野県を始め、近隣の地域で北進・東進が著しいイトトンボの仲間です。
本種は、村内では2022年に突然複数の池や休耕田等で見つかりました。翌23年にも見つかり、村内ですでに繁殖・越冬しているようです。村内での発見は、長野県内の分布図を変える貴重なものとなりました。

◇ツマグロヒョウモン
このチョウも、もともとは南方系の中型のチョウですが、近年北日本にも分布を拡大しています。2020年に青倉や横倉などで見つかり、びっくりしました。
その翌年は、一度も確認できなかったのですが、2022年、2023年は、再び複数か所で確認しました。特に23年には、これまで最高の目撃回数となり、それまで確認されていなかった千曲川右岸の小滝でも確認しました。
本種は、園芸用のパンジーやビオラなども食草となるので、村内ですでに繁殖している可能性があります。

ほかにも昨年村内で初確認された外来種のアカボシゴマダラなども、今年の状況が気にかかります。
こうした暖冬後の年は、生き物の移動や拡散が例年よりも活発となるため、普段見られないチョウやトンボが見られるかもしれません。身の回りで、見慣れない生き物を見かけましたら、ぜひご一報ください。

※詳しくは、本紙25ページをご覧ください。

問合せ:教育委員会事務局
【電話】87─3118
(栄村希少動植物調査員・涌井泰二)

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