■希少動植物調査員からの報告(42)
今年は4月に30℃を超える日があるなど、例年にない高温の春となりました。そのため、村内の桜も一気に満開となり、私たちの目を楽しませてくれました。例年になく春が足早に過ぎていきます。
これから田んぼに水が張られると、カエルたちが一斉に鳴き出します。その声に冬の苦労をいつしか忘れて、心地よい季節の訪れを感じます。
◆カエルは自然環境のバロメーター
こうしたカエルたちも、里山の風景をつくる大切な生き物です。しかし、現在、水田地帯からカエルの種類が減っている地域が多くあると聞きます。水田地帯には、トノサマガエルやツチガエルなど、何種類ものカエルが生息していたのですが、現在ニホンアマガエルだけになっているところが多くあると言います。それはなぜでしょうか?
もちろん農薬などの影響もありますが、水田地帯の用水路がU字溝に変わってきたことが原因の一つに挙げられています。
四肢に発達した吸盤を持つニホンアマガエルは、もともと草木の上で生活することが多いので、U字溝の壁を登られます。しかし、水田の中や地上で暮らす体が大きく体重があるトノサマガエルやツチガエルなどでは、吸盤があまり発達していません。そのため、生活域にU字溝があると、なかなか登ることができず流されてしまうのです。
それが、ニホンアマガエル以外のカエルの移動を妨げ、生息を困難にしています。そのため、そうしたカエルは現在全国的に希少種になってしまった種が多くいます。
栄村ではどうでしょうか?村内の水田周辺では、現在ニホンアマガエルのほか、トウキョウダルマガエル(環境省:準絶滅危惧種、長野県:絶滅危惧II類)、トノサマガエル(環:準絶、長:準絶)、ツチガエル(長:絶II類)などが見られます。山際の水田周辺では、ほかにもニホンアカガエルやヤマアカガエルといった種も見られます。私たちの調査では、幸いなことにこうしたカエルを村内で広く確認しています。
カエルは、サシバ(環:絶II、長:絶IB類)の重要な餌でもあります。サシバは里山を生活の場とする希少な猛禽類で、村内では千曲川や志久見川流域の集落周辺で多く見られます。カエルの種類や量の多さは、自然環境のバロメーターとも言えます。
◆背中線のあるツチガエル
ツチガエルは、村内の里地の水田から山間地の池沼や湿地まで広く生息するカエルです。背中にイボのようなでこぼこがあり、背中全体が焦げ茶色の中型のカエルです。
私たちの調査の途中で、ツチガエルの中で時々変わったものを見かけます。それは、背中の真ん中に、はっきりとした黄土色の明るい線(背中線)が入った個体です。どうやらごく稀にこうした個体が見つかるようです。
村内では、これまで千曲川左岸の野々海池や今泉周辺で複数回目撃しています。しかし、そのほかの地域ではまだ見つけていません。
お隣の津南町では、信濃川左岸の山間地だけでなく、右岸にある池沼でも見つけています。ですから、今後村内の千曲川右岸地域でも見つかる可能性が大いにあります。
これから田仕事など、野外で活動する機会が増える時期です。身の回りのカエルにも、関心を持っていただけたらうれしいです。そして、もし背中線のあるツチガエルを見つけたら、ご一報ください!
(栄村希少動植物調査員・涌井泰二)
問合せ:教育委員会
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