◆はじめに
長野県は、令和8年4月から長野県観光振興税(仮称)制度(以下「県制度」という。)の導入を目指しています。この制度は、宿泊行為に対する課税(いわゆる宿泊税)を行うものです。県の税率は、1人1泊につき300円の一律定額で、3,000円未満の宿泊に対しては課しません(免税点)。また、修学旅行等の学校・施設等の行事については課税免除となります。
白馬村でも、これまでに観光振興のための財源の確保について検討してきました。その候補の一つに宿泊行為に対する課税があり、村は県と同時期にこれを導入することを目指しています。いずれの課税対象も宿泊行為になりますので、村内の宿泊施設等の宿泊者は県税と村税を負担することになります。ただし、県税に村税を上乗せするということではありません。独自課税を行う市町村では、県の税率が300円から150円に引き下げられ、その引下げ分(課税余地)を用いて市町村税を課税することになります。そのため、課税余地と市町村税が同額であれば、宿泊者が負担する税額に変わりはないことになります(図1)。
ちなみに、宿泊者が税を支払う場面では、市町村税と県税を合算した税額(図1の例では300円)を支払うことになります。
このように、村税と県税は課税対象(宿泊行為)と納税義務者(宿泊者)が同一であり、かつ、宿泊者は合算した税額を支払うことになりますので、宿泊者と宿泊施設等にとってわかりやすい制度にする必要があります。そのため、この骨子は先に公表された県制度を前提としています。
◆制度の主要項目
まず、村の裁量で活用可能な財源の規模といった視点に加えて、宿泊税を導入するねらいと宿泊料金の分布から、村として独自課税を行うのかについて考えました。その結果、すべての点において独自課税を行うことが有利に働くと判断し、次のとおり村制度の骨子案を決定しました。
1.名称…白馬村観光振興税(仮称)
県税の名称は、「長野県観光振興税(仮称)」です。これは、宿泊行為に対する課税を先行させるものの、将来的には宿泊業以外への展開も想定しているためで、目的(観光振興)を表す名称としています。
白馬村では、村税と県税を合わせて賦課徴収するため、統一感のある名称が望ましいことと、目的を同じくする他の財源も並行して検討しているため、将来的に他財源への展開を想定したときに目的(観光振興)を表す名称が適切であることから、村税の名称も「白馬村観光振興税(仮称)」としました。なお、宿泊者への説明の場面を想定し、伝わりやすく、かつ、統一した英語表記や通称は別途検討します。
2.税率…段階的定額制
県税の税率は、1人1泊につき300円の一律定額制です。また、1人1泊3,000円未満の宿泊に対しては税を課しません(免税点)。
白馬村内における宿泊料金は、5,000円未満の低価格帯から50,000円以上の高価格帯まで幅広く分布しています。そのため、村税の税率の設定にあたっては、宿泊税の相場からみて300円を割高に感じてしまう低価格への配慮と、応能負担原則(税金は各人の担税能力に応じて平等に負担されるべきという原則)に則った高価格帯への対応が求められます。
先述したとおり、独自課税を行う市町村では県の税率が引き下げられますので、これを活かして段階的定額制を設定します。県税はどの価格帯であっても一律150円ですので、価格帯に応じて村税に強弱をつけることで、低価格帯では税率を低く、高価格帯では税率を高く設定し、これにより低価格帯への配慮と高価格帯への対応を同時に実現します(図2)。
この場合の税率は、宿泊料金の区分に応じた額になりますが、いくつかの案をA.宿泊税の相場からみて割高に感じてしまう低価格への配慮、B.応能負担原則に則った高価格帯への対応、C.低い税額となるような調整が働くことはないか、D.需要額に対する充足度といった4つのポイントから評価し、表1のとおり設定しました。
なお、100,000円以上の税率は2,000円と設定していますが、今後村内において、超高価格帯の宿泊施設のオープンが計画されていることを考えると、こうした価格帯に対応した段階設定も必要です。そのため、宿泊者の担税力からみた負担の公平性や制度運用後の税収額から必要性を見極めます。
表1 白馬村観光振興税(仮称)の税率
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