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第24回 白馬村の農林業(人と野生動物の棲み分け・緩衝帯整備)

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長野県白馬村

今年は、例年よりクマの目撃件数が増加傾向のため、長野県が令和6年6月5日から8月31日(土曜日)までの間、県内全域を対象とした「ツキノワグマ出没注意報」を発令しました。白馬村では、増加傾向の野生動物対策として、草刈りウィークを設け、住民に環境整備を呼びかけるとともに、人里付近の(*)緩衝帯整備を実施しています。集落や農地、道路沿いの森林は、人と野生動物の棲み分ける緩衝帯になります。この森林を整備することにより、明るく見通しが良くなり、集落に野生動物が出没しにくい環境に誘導します。
(*)緩衝帯整備とは、薮を刈払い、見通しを良くして、山と里との間に野生鳥獣が出没しにくい“緩衝帯”を作ることを言います。

1.里山再生
集落周辺の里山には広葉樹二次林(もともとあった天然林に伐採などの人為的行為を加えた後に自然に再生した森林)が分布しています。
里山の林縁部は、ツル性植物や低木類が覆いかぶさり、マント群落(マントを羽織っているような状態)を形成し、林内は高木が過密状態になっています。この状態が長期間続いたことにより、野生動物が人里との境界が解らなくなり、隠れ場所となっています。

2.緩衝帯整備
大型獣の出没や農作物等の獣害が頻繁に発生している林縁部は、マント群落や林内の低木類を除去します。

◆獣が気付くか…それとも人間が気付くか?
現在、緩衝帯整備では20m程度見通しを良くするよう整備をしますが、見通しが良くなれば、獣より先に人間が獣を認識することができます。人間が林内を見た場合、どの位奥まで見えるかというと「人の顔が見分けられる最大距離は24m」と言われています(藤本和弘1978)。野生獣を認識できるのもこの24mが基準になってきます。可能な限り20~30mは林内の見通しを良くすることが必要です。
また、立木本数も見通しを良くするため立木密度を300~600本/ha程度にするのが理想的ですが、人の楽な視線仰角10°を考慮した場合、枝下高5.7m程度までの枯れ枝や太枝を除くことによって、林内の見通しをさらに良くすることができます。
*令和5年度策定北アルプス森林林業基本計画「白馬村実務・手引編」より

3.クマ対策のゾーニング
かつて、里山は、人間の生活に必要な薪などを採取する薪炭林として利用されてきましたが、近年は利用されない森林も多く、クマの生息適地となりつつあります。
クマ被害を軽減するためには、人の生活圏とクマの生息域を区分(ゾーニング)することが大切です。住宅や農地に接する森林や管理不足の耕作放棄地等は、クマの移動ルートや隠れ場所になります。見通しが良くないと、人の生活圏へクマが出没しやすく、突発的なクマとの遭遇による人身被害が起こりやすい環境になります。河川敷や河畔林などもクマの移動ルートとなります。
クマの出没を抑制するために、これらの箇所の環境整備や狩猟、間伐、レクリエーション利用など、人の活動を増やしていくことで、日常的に集落近くの山林をクマが利用しにくい環境にしていくことが大切になります。
これらの対策は、個人が実施することも大切ですが、集落や協議会単位の森林整備事業として総合的に取り組むことにより、より効果を発揮します。

お問合せ:白馬村役場 農政課
【電話】0261-85-0766

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