■古道を知り今そして未来へ
佐々木(ささき)駿(しゅん)隊員
こんにちは。協力隊の佐々木です。一面すっかり新緑の景色。虫や雑草たちからは今年もヨロシクネなんて軽やかな会話が飛び交いつつ、深夜まで鳴り響くは蛙の大合唱…。みんな活発。そんな生物野外フェスを(屋内でも)堪能できるゾクゾクする季節となりました。真夏日並みの気温もちらほら。みなさん日中の作業など水分補給忘れずにお過ごしくださいね。
さて、和紙について。今年に入りとにかく紙漉(かみす)き。目まぐるしいほどの段取り勝負。原料の仕込みからチリ取り、そして紙漉き、乾燥までの全工程を一人で行っています。1年以上前に保存会より助言いただいた漉き方のコツを反芻(はんすう)しながら、いかに自分のものにできるか、定着させられるか。一つひとつの工程検証も含めて没頭し、いかに納得できる和紙を作れるか。そんな視点でこの5カ月間取り組みました。障子紙だけでなく用途に合わせた和紙作りへの柔軟さが不可欠ですので、手漉き和紙という特性や立岩和紙への解釈、理解をさらに深めます。
和紙の出口もまた紙漉きと車の両輪です。他産地の工房、職人、アーティスト、販売店の方より情報収集しつつ和紙の潮流についても毎夜勉強しています。和紙は、脇役にも主役にもなれることが魅力だと私は考えます。素材として手にとっていただく以上はライフスタイルにあわせた「提案」まで必要な時代です。また、和紙職人が芸術・作家活動を行うのが当たり前になっているように、手漉き和紙が日用品から芸術品にもなりうる時代です。私も和紙の可能性を信じ、全方位を視野に入れ取り組んでいます。
創作・デザイン和紙、和紙作品を通じての交流もありました。昨年の長和町文化祭に始まり、ナワメマーケット(和田宿)、千葉県内の展示などに参加。町や立岩和紙を紹介しながら作品に目を留めていただき、声をかけていただき、人のつながりや見える景色に広がりが生まれています。日々の小さな積み重ねが少しずつ芽吹いてきたような、そんな春。協力隊任期も折り返し。やるからには進化を。ゾクゾクするような和紙のカタチを描きます。
最後に。上田市美術館にて開かれる『第9回山本鼎版画大賞展』に〈立岩和紙賞〉が新設されました。入賞者へ贈呈する和紙を作らせていただきます。頑張ります!
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