■風の人、土の人
外様地区 平塚正人
▽感謝
地方創生などが語られる時、「風の人」「土の人」という言葉が引き合いに出されることがあります。
玉井袈裟男(たまいけさお)さん(元信州大学名誉教授、農学者、社会教育指導者)が地域活動の拠点として立ち上げた、「風土舎」の設立宣言を引用します。
風土という言葉があります
動くものと動かないもの
風と土
人にも風性と土性がある
(中略)
土は風の軽さを嗤(わら)い、風は土の重さを蔑む
愚かなことだ
(中略)
理想を求める風性の人、
現実に根をはる土性の人、
集まって文化を生もうとする
ここに「風土舎」の設立を宣言する(玉井袈裟男)
常日頃から、優しく、丁寧に、よそ者(風の人)である私を受け入れてくださる外様の皆さまに、あらためて感謝申し上げます。
▽飯山って、いいな!
春暖の候(飯山の花)
永らく黒岩山付近を覆っていた鉛色の雪雲が切れて、久々の暖かな陽射しに、眩しく映る花は格別です。
「あゝ、春だ」
飯山の冬を過ごした人にしか、この花の美しさは味わえない。これを強いて喩えると、白黒テレビが映すモノトーンの世界から、初めてカラーテレビを見た人が天然色に感動するように。
カラーテレビしか知らない世代の人(もしくは飯山在住以外の人)には、この比喩、「わかんね〜だろうな」残暑の候(風の谷)
野沢温泉村の山波が柔らかな曲線を描き、信濃平が一望できる広い谷の一画に私の住処があります。
午後三時を過ぎ、畑(家庭菜園)仕事に区切りをつけた頃から、この谷の空気は動き出します。ちょっとだけ視線を上げると、流れに勢いを増した空気が、信濃平の稲穂を揺らし、風紋となって、十日町方面に流れていきます。この様を眺めるのが好きです。
汗を冷やしてくれる涼風に吹かれていると、頭の中では、久石譲さん(中野市出身)のNausicaä Requiemが奏でられています。
ランランララランラン
そうだ!孫が遊びに来たら、風に吹かれながら、伝へよう。「此処はね、『風の谷』と云うんだ」(私独りが云っているだけだが?)
初秋の候(布施田神社祭)
神社の境内に夜の帳(とばり)がおりると、焚火の光が揺らめきます。揺らめいた光に照された稚児の舞が神秘的に映し出されます。非日常の世界へと誘われます。この祭りを継いできた先人達の時代にタイムトリップしたような感覚に捉われます。
先人達は神様に何を感謝し、何を祈願したのか?
先人達は何に歓び、何に苦しんだのか?
稚児の舞は源平合戦がモチーフ?
なぜ?
この祭に限らず、外様の歴史についても、もっと知りたいという欲求が湧きます。風土・伝統を次世代に継承すること、たいへん大事だと思います。
晩秋以降は略。
▽筆者紹介
平塚さんは、田舎暮らしがしてみたいと5年前に愛知県から外様地区へ移住されました。現在は、購入した古民家の改修のため、職人さんたちに混じって自らも作業に精を出されています。(外様公民館)
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