会津若松市とむつ市は、昭和59年9月23日に姉妹都市盟約を締結しました。この盟約は、鶴ヶ城の築城600年、むつ市制施行25周年を記念して結ばれたものです。
戊辰戦争後に廃藩を余儀なくされた会津藩は、1869年に家名再興を許され斗南の地(現在のむつ市)で斗南藩として再建されました。廃藩置県後、多くの会津人が斗南の地から全国に散っていきましたが、一部の会津人は斗南藩に留まり、農業を続けた島影家や、広沢安任(ひろさわやすとう)といった人物が活躍しました。斗南藩はわずか1年数ヶ月の統治でしたが、その期間における原野の開拓や斗南日新館による教育の精神は、後のむつ市の発展に大きな影響を与えました。
歴史的にゆかりのある両市は、これまで40年間交流事業等で親交を深め、強い絆で結ばれてきました。この築き上げてきた絆を途切れさせないためにも、次の時代にしっかりと伝え続けていくことが重要です。
こども達の交流もその一つで、これまで行なってきた派遣交流のほか、さまざまな交流を通して姉妹都市としてのつながりを感じ取っています。
今回の特集は姉妹都市盟約40周年を記念して、関連団体の取組のほか、会津まつり、その歴史や先人の想いに触れ、想いを未来につなぐため自分の役割に一生懸命向き合うこども達の姿をご紹介します。
■斗南會津会 斗南藩立藩 百五十五年
斗南會津会は、戊辰戦争や斗南に移住して数多くの労苦の中で亡くなった先人の慰霊をはじめ、当地を訪れる方への斗南藩関連史跡の案内や説明、会の歴史をまとめた記念誌を作成するなど、次世代への伝承にも力を入れてきました。
また令和2年に迎えた「斗南藩150年」を期して、広くむつ市内外に対して、江戸から明治へと大きな社会のうねりの中にあった当地の存在感を示し地域の活性化に寄与したいという想いがあります。
近年は新型コロナウイルスの影響により各種の行事が延期され、会としての活動も困難の多いものとなっていました。それでも、来年度の斗南藩立藩155周年を迎えるにあたり会としてのより一層の団結と、地域の繁栄の基礎を築いた先人への感謝を忘れずに活動を継続しています。
■2024会津まつり 体感するつながり
毎年9月下旬に開催される会津最大のお祭りが会津まつりです。3日間にわたり、提灯行列・会津磐梯山踊り・日新館童子行列・鼓笛隊パレード・先人感謝祭・会津藩公行列などを開催します。そのなかでも、藩公行列は、約500名からなる武者姿の行列が見どころで、むつ市からも毎年「斗南藩」に扮したむつ青年会議所のメンバーが中心となって行列へ参加しています。
9月22日の出陣式はあいにくの悪天候にも関わらず、たくさんの観客が訪れていました。会津まつり最大のイベントである藩公行列では、赤い顔で一際目を引く會津藩奴隊(やっこたい)※による毛槍(けやり)の所作も披露され、見どころの一つとなっています。
「今年で40周年という共通点に強い親近感を感じています」と話すのは會津藩奴隊事務局を務める菊地政哉(まさや)さんです。「会津若松市とむつ市が姉妹都市盟約締結をした昭和59年9月23日は、會津藩奴隊が、会津まつりで初めて演舞を披露した日です。以前より会津藩と斗南藩という関係性はもちろん存じていましたが、こうした共通点があったことを大変うれしく思っています」とお話ししてくださいました。
※奴隊:参勤交代の際に先頭を歩き、主に藩主の行列の護衛や武士の雑務を担っていた。
農民や町民から多くが雇われていたと言われている。
◇菊地 政哉(まさや)さん
会津若松市職員
「會津藩奴隊」の事務局を務めている。
■続けてきた交流
平成23年のむつ市こども議会で提案、議決され始まったこども派遣交流事業ですが、姉妹都市盟約締結30周年を迎えた平成26年度には、会津若松市から33名の中学生が「會津ジュニア大使」として、むつ市に派遣されました。むつ市滞在中に斗南藩庁が置かれた円通寺を見学したほか、歴史的なことだけではなく、田名部まつりを見学するなどむつ市自体への理解をより深めてもらえる事業となりました。
令和元年度には、むつ市の中学生が「こども議員」として会津若松市の中学校を訪問し、日新館や鶴ヶ城などの歴史的な文化を学びました。両市を学ぶことにより、地元への理解も深まる有意義な時間となりました。感染症の流行など、事業の継続に影響は出ていますが、交流活動を行なうことはお互いの友好親善を深めるだけでなく、次につながる取組でもあり未来へ伝えていくための活動になっています。
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