令和6年4月に稼働を開始する予定の株式会社寅福プラントのトマト工場。現在、むつ市斗南岡地区に稼働に向けて着々と建設が進められています。むつ市に新しい風をもたらす「スマート農業」のいまと皆さんが知らない建設現場の裏側に迫ります。
■スマート農業先進国オランダの風を
◇ついに、始まります。
皆さん覚えていらっしゃいますか?ちょうど1年前の3月号の特集のことを。むつ市とオランダ・ウェストラントと協定を締結し、世界屈指のスマート農業先進国であるオランダの民間施設や研究機関などを視察。「スマート農業始めます」とカーボンマイナス構想とともに紹介をしました。
現在、斗南岡地区において株式会社寅福プラントが「ロボット、AI(人工知能)、IoT(機材や施設をインターネットに接続する技術)などの先端技術を活用したスマート農業を取り入れたトマト工場を建設中で、令和6年4月に稼働予定となっています。ついに「スマート農業始まります」
今回は、その普段見ることのできない建設現場の様子と建設に携わる方々をご紹介します。オランダのスマート農業の新風が、「不毛の地」と揶揄されたむつ市に吹きはじめます。
◇大規模なトマト工場
ここで、施設や設備の紹介をします。
(1)ガラスハウス
メインとなる建物で、高さは8.5メートル、広さは両側にある栽培エリア(それぞれ1.5ヘクタール)と中央の事務所兼出荷場(0.5ヘクタール)を合わせて、合計3.5ヘクタールあり、敷地面積約8ヘクタールの半分近くを占めています。また、事務所の上に、栽培エリアを見学できるスペースが設けられる予定です。
(2)チップヤード
丸太の状態で仕入れた木材を木質チップに加工します。
(3)バイオマスボイラー
木質チップを燃料としたボイラーで生成されたお湯は、貯湯タンクに送られた後、ガラスハウスに張り巡らされた配管を通り、施設内の温度調整に利用します。
(4)排ガス浄化装置
ボイラーの燃焼で発生する排ガスを浄化装置によりクリーンにした二酸化炭素はガラスハウスに送られ、トマトの光合成を促します。
(5)貯水スペース
トマトをはじめ植物の生育には水が不可欠です。この貯水スペースにハウス内を循環した温水のほか、雨水や雪解け水を貯めておくことができ、満水時から20日間全く雨が降らなくても問題なく栽培管理が可能です。
そのほかにも、「AGV(無人搬送車)」が導入される予定であり、収穫したトマトを自動で運ぶことが可能となるため、作業の効率化が図られます。
また、トマトの生長には日射量が大事な要素ですが、日照不足を補うため、ガラスハウス内には数多くの「LEDライト」が設置されており、コンピュータ制御により適度な光を照射することで、生産性の向上が図られます。このLEDライトは、実は片方の栽培エリアにしか設置されていません。それは、LEDライトの光で冬期間も栽培ができることを活かし、それぞれの栽培エリアの生育時期をずらすことにより、通年でのトマトの安定供給を可能とするためです。さらに、このガラスハウスの天井のガラスには、日本では珍しい、太陽からの光を分散させる「散乱光ガラス」が使用されており、室温が急激に上昇することを防ぎ、ガラスハウス内の配水管への負担を減らすことができます。
このような細部まで特徴をもったスマート農業が今後の日本を支えていくことになります。
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