実りの秋を迎えました。下北の山の木々も色づき、木の実などもおいしい時期となりました。
江戸時代の紀行家菅江真澄は2年余りを下北で過ごしましたが、寛政6(1794)年に、東通村目名付近のヤマブドウのことを記録しています。
「その頃の時雨で山は紅葉が進み、ぶどうの葉も唐錦の色を尽くしたようだ」と記しながら、赤や黄色の葉のついた黒いブドウの房が描かれた見事な図絵も挿入しています。
その図絵に添えられた文には、「山ぶどうは、黒ぶどう、大ぶどうとも言い、その味は特にすばらしく、このあたりの人はそれを採っておいしいものとして食べる」と書かれています。
野生種のヤマブドウは今も下北半島各地で見ることができますが、栽培されたブドウとなると話は別です。リンゴ栽培が盛んな青森県ではありますが、下北半島は長い間果樹不毛の地とされてきました。
しかし、釜臥山の麓に、山地によってヤマセや霧から守られ、陸奥湾からの風で畑の温度や湿度が適度に保たれる、ほどよい環境がありました。こうしたジオの恵みと関係者の努力が相まって、この地でブドウ栽培が可能となり、渋み、甘み、酸味のバランスのとれた奇跡のワインが生み出されました。「下北ワイン」の「Ryo」と「Kanon」は、下北ジオパーク認定商品ともなっています。
また、この夏、海底で熟成したワインを引き上げたとの話題もありました。陸奥湾の適度な水温と波の揺れがワインをまろやかなものに仕上げてくれるのだそうです。これもまたジオの恩恵といえそうです。
年末に向け、お酒を飲む機会が増える人も多いかと思います。下北ワインには多くの銘柄がありますが、水産業や畜産業が盛んな下北では、それに合う食材も揃います。下北の特権を活かして、旬の“地物”を味わいながらグラスを傾けてみてはいかがでしょうか。
◆今月のジオ図鑑
▽北の夢
赤ワイン用品種の「ピノ・ノワール」と野生種の「サンカクヅル」とを交配した下北ワイン向けの独自品種
▽point
・今年は全体的に非常に良いブドウが収穫できたそうです。
・おいしいワインができるのが楽しみですね。
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