今年は暖冬の気配もありますが、それでも冬になると恋しくなるのがアンコウ料理です。食用になるのは主にキアンコウで、風間浦村は代表的な産地として知られます。体が温まるアンコウ鍋を始め、ともあえや煮こごりなど、さまざまな料理がありますが、風間浦産ならではの食べ方として、アンコウの刺身があります。四季折々の鮮魚が身近にある下北では、それに不思議を感じることがないかも知れませんが、ほかでアンコウの刺身を見ることは稀です。
アンコウ人気の高い茨城県では、20km以上も沖に出て底引き網で他の魚と混獲するようですが、風間浦村では、海岸から2~3kmで水深70mほどの漁場に到達可能で、刺し網や空縄(からなわ)(餌をつけない延縄)釣りで漁獲したアンコウを活魚として速やかに水揚げすることができます。風間浦の「活アンコウ」は、まさに津軽海峡の海底地形がもたらしてくれたジオの恵みでもあったわけです。
逆に、ジオに対してアンコウ漁が貢献してくれたこともありました。2018年、蛇浦沖のアンコウの刺し網に奇妙な物体がかかり、冨岡村長を介して、村産業建設課長、むつ水産事務所へと繋がれ、青森県立郷土館に連絡が入りました。早速その物体を借り受けた同館の化石担当の学芸員は、洗浄の上、保存処理を施し、他の研究者とともに様々な分析を行いました。その結果、それは約18,000年前のセイウチの牙の化石であることが判明しました。これにより、当時の下北はセイウチが生息できるほどの寒冷な気候であったことがわかるなど、多くの情報を得ることができました。
このリレーがどこかで止まったり、対応が遅れたりすると、この貴重な研究成果は得られなかったことでしょう。実はむつ市奥内でも網で化石が引き上げられたことがあります。貴重な資料に気づき、捨てずに届けてくれた漁師さんに感謝せずにはいられません。
・風間浦産のキアンコウ
・刺し網にかかったセイウチの牙の化石
青森県立郷土館所蔵長さは約50cm。
※詳しくは広報紙をご覧下さい。
◆今月のジオ図鑑
キアンコウ(アンコウ目アンコウ科キアンコウ属)
▽point
・「風間浦鮟鱇」のブランド基準
1、全重量5kg以上
2、生存したまま水揚げされたもの
3、12月~3月に水揚げされたもの
4、胃内容物を取り除いたもの
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