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歴史の小箱 No.433

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■愛鷹・箱根の旧石器文化 初音ヶ原遺跡・休場遺跡
郷土資料館では令和七年一月五日まで「石器とくらしー愛鷹・箱根西麓の旧石器文化とその周辺ー」を開催しています。展示の対象とした旧石器時代とは、まだ土器が発明されていない時代で、約三万八千年前から一万六千年前に相当します。この時代は地質学では氷河時代と呼ばれ、人々は動物を追いかけて狩りをしながら移動する生活を送っていたと考えられています。
今回は巡回展で取り上げた遺跡を二カ所紹介します。まず注目していただきたいのは、三島市の「初音ヶ原遺跡(はつねがはらいせき)」です。通常の旧石器時代の発掘調査では、石器製作跡(せっきせいさくあと)(石を打ち欠いて石器を作った跡)、礫群(れきぐん)(石蒸し料理を行った跡)、配石(はいせき)(作業台として使った石)しか見つかりませんが、ここでは平均値で直径一・四メートル、深さ一・三六メートルの穴が複数発見されました。発見当初は旧石器時代の人がどんな目的で掘った穴なのかよく分かりませんでしたが、調査を続けていくうちに、規則的に連続する数十基の穴が尾根を横切るように三列並んでいることがわかってきました。そのため今日では尾根の上を移動する動物を捕まえるための「陥(おと)し穴」と評価されています。初音ヶ原遺跡のように六十基以上の陥し穴がまとまって見つかるのは大変珍しく貴重なことで、海外にも広く紹介されています。
また発掘調査では石器や土器の評価だけではなく、炭化した植物や花粉化石(かふんかせき)、火山灰などの分析によって、年代測定や環境の推定も行っています。こうした分析の結果、多数の陥し穴が見つかったのは約三万一千年前の第III黒色帯(だいさんこくしょくたい)という地層で、ススキやササ類がしげる草原のような環境だったことも分かってきました。
次に注目していただきたいのは、沼津市の「休場遺跡(やすみばいせき)」です。昭和三十九年(一九六四)の発掘調査で、日本で初めて旧石器時代の石で囲った炉の跡が二基発見されて一躍有名になりました。この調査で出土した千点を超える石器はいずれも細石刃(さいせきじん)と呼ばれる小型の石器で、さらに炉の中に残っていた木炭の分析を行った結果、約一万七千年前の遺跡であることが判明しました。休場遺跡の発掘調査によって、旧石器時代末期の様子と年代が明らかになったことから、日本の考古学研究の歴史を語る上で重要な遺跡として、昭和五十四年(一九七九)一月に国の史跡に指定されました。旧石器時代の遺跡としては初めてのことです。また炉の跡が見つかった地層は「休場層(やすみばそう)」と命名されて、その名称は考古学や地質学において広く使用されています。

楽寿園内の郷土資料館では、富士・沼津・三島3市博物館巡回展「石器とくらし」を開催しています。
令和7年1月5日(日)まで

郷土資料館(楽寿園内)
【電話】971・8228

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