「コミュニケーションが苦手で、働くことに抵抗がある」「働いていない期間が長いから自信がない」「心身に不調があり、職場の理解や配慮が必要」など、病気や精神的不調、高齢、ひきこもりなど様々な理由から、働くことが難しい「働きづらさ」を抱える人たちがいます。(公財)日本財団が行った調査によると、働きたくても働けない、働きづらさを抱える人は、日本全国に約600万人いると言われています。これを富士市の労働人口に当てはめると、1万人以上の人が、何らかの理由で働きづらさを抱えていると推計されます。
そんな「働きづらさ」を抱え、これまで自分の能力を十分に発揮できなかった人でも、生きがいや働きがいを持って働くことができる社会にするため、富士市は全国で初めて「富士市ユニバーサル就労の推進に関する条例」を制定し、平成29年4月に施行。同月に富士市ユニバーサル就労支援センター(以下支援センター)を開所し、就労支援員が企業と就労希望者双方の状況に合ったマッチングを行い、就労に向けたオーダーメードの支援を行っています。
働きたくても働くことができない全ての市民が働けるまちに。今回は「ユニバーサル就労」について特集します。
●ユニバーサル就労とは?
ユニバーサル就労とは、(福)生活クラブ(千葉県佐倉市)が発案した言葉で、
(1)働きたくても働くことができない全ての人が働けるような仕組みをつくること
(2)誰にとっても働きやすい職場環境づくりを目指していく取組のことです。
特定の誰かではなく、全ての人が働きやすい環境を目指す取組そのものをユニバーサル就労と言います。
企業などと雇用契約を結んで労働者として働く「一般就労」と、障害のある人が福祉サービスを受けながら就労する「福祉的就労」の間を埋める中間的就労の取組でもあります。
●ほかの就労支援との違い
就労支援には、高齢者や障害者、外国人、女性を対象とするものなど様々な形があります。ユニバーサル就労では、一人一人の状況に合わせて支援を進めます。その人の話を丁寧に聴き、方向性を一緒に考え、準備を整えながら、職場見学や就労体験を実施。実際に働く現場を見て、体験・通勤してみることで、自分に合った仕事が探しやすくなるという特徴があります。
厚生労働省が設置する公共職業安定所(ハローワーク)との違いとして、直ちに一般就労を目指すことが困難な人に対し、より丁寧にきめ細やかな支援を行っていくという点が挙げられます。
市内には、就労に向けた様々な相談窓口があります。各機関へ紹介するなど、相互に連携・情報共有をしながら就労支援を進めています。
●対象はどんな人?
働きたくても働くことができない全ての富士市民が対象です。
▽働きづらさの例
・コミュニケーションが苦手
・長時間労働が難しい
・就労経験がない
・触法歴がある
・心身不調
・子育て中
・家族の介護中
●富士市ユニバーサル就労支援センター
支援センターでは、就労に関する相談だけでなく、生活やお金に関することなど様々な困り事の相談もワンストップで受け付けています。平成29年の開所から、延べ4700件以上の相談を受け付け、就労支援の利用申込者は令和4年度末までで813人。うち493人の就労が実現しています。
支援のまず一歩として、面談でできること・できないことを確認します。その後、興味のある職場へと見学に行ったり、その職場で実際に働くという体験をしたりして、実際の現場で、その人のペースに合わせてステップアップをしていきます。この期間に、必要に応じて就労に向けた研修なども行い、これらを経て、雇用契約へと結びつけます。
就労後も、支援センターが企業と利用者へ定期的に連絡をし、支援を続けます。
●認定協力企業
ユニバーサル就労を進めるためには、企業などの協力が不可欠です。そのため、この取組に賛同し、協力いただける企業などを、市が「富士市ユニバーサル就労推進事業認定協力企業」として認定しています。
令和5年9月時点で、231社を認定しています。職場見学や就労体験の受入れ、社内体制づくりのアドバイスなど、相互に連携して就労を支援しています。
▽ユニバーサル就労 支援の流れ
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