聴覚障害を抱えながらも数々の作品を生みだした木彫作家 故・後藤白童(ごとうはくどう)氏。
河津町出身の後藤白童氏の作品が町内各地で今も大切に守られています。
・障害と向き合った後藤白童
明治41年、旧下河津村沢田に生まれた後藤白童氏は、16歳の時に聴力を失い、音のない世界で生きることとなりました。孤独や不安を癒すために、近くの林際寺に毎日お参りを続け、祀られていた観音像に感銘を受けたことをきっかけに仏像制作を始め、作品作りが始まります。しかし、聴力がなく筆談でのコミュニケーション、平衡感覚がないため立体的な表現が難しいなど、木彫彫刻作家として苦心しました。そのような中でも、自身の障害と向き合い、逆境を乗り越えるため努力を続けました。
・自立し、補い合う
白童氏は芸術活動に勤しむにあたり、まずは生活の基礎をしっかりしてから、と考え、家庭をもうけ、住まいを構えるなど木彫の道に専念できる環境を作りました。そして、木彫芸術を志すものとして致命的な弱点となった平衡感覚と立体感覚の喪失という困難にも、腕一本の力だけでなく、残っている健全な器官の総合力を発揮して辛抱強く立ち向かいました。こうして、白童氏は障害を抱えながらも、家族と支え合い、自立し、自身の能力を補い合って、木彫作家として大成していったのです。
・人にやさしいまち
障害のある人でも安心して自立した生活が送れるまちづくりを目指して、町では「まちじゅうアート」への参画や、就労継続支援事業所で制作された日用品の配布、障害者向け就職相談会の実施など、障害者と町民のつながりを育むとともに就労意欲の醸成の支援を行っています。白童氏の志は令和の「人にやさしいまちづくり」に繋がれています。
■まちじゅうアートプロジェクト
障害のある人の作品を有償で借り受け、その利益の一部を作者に還元し、障害のある人の芸術活動への理解促進と経済的な自立に寄与するプロジェクト「まちじゅうアート」に町も参加しています。作品は保健福祉センターロビーと、役場庁舎1階通路の2ヵ所に展示されています。
■就労継続支援事業所 日用品の配布
就労継続支援事業所(すぎのこ作業所・下田市)で障害者が製作した日用品を12月の「障害者週間」に合わせて保健福祉センター窓口にて配布しました。今年はアクリルたわしと、竹パウダーが配布されました。
■Gallery Of Hakudo
故郷河津へ想いを寄せて
※詳しくは本紙をご覧ください。
■後藤白童 略歴
明治41年 旧下河津村沢田にて誕生
昭和2年 陶彫家 月谷初子に師事
昭和6年 木彫家 佐々木大樹に師事
昭和12年 文展初入選
昭和48年 日展会友(22回入選)
昭和51年 紺綬褒章受章
平成2年 河津町篤行表彰
平成10年没 享年89歳
■たくましく生命力溢れる作品たち
上原美術館 主任学芸員
田島 整(せい)さん =下峰=
後藤白童氏は聴力障害を乗り越え、たくましく、生命力を感じさせる作品を残しました。河津町役場ロビーにある「のぞみ」は日展入選作で、のびやかな健康美の中に明るい希望を感じさせる傑作です。河津八幡神社の「河津三郎と力石」は彼の出世作を原型にした力強い作品で、見逃せない作品です。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>