今月のすてき島人
伊吹島海上タクシー
代表 三好兼光(みよしかねみつ)さん
※写真は広報紙2ページをご覧ください。
■イリコだけじゃない 味わい深い島の歴史
─島でさまざまな活動をされていますね。
高校を卒業してから、38年勤めていた会社を定年退職して「島を元気にしたい」と、12年前に戻ってきました。その時感じたのは、産業はあるけど観光客を受け入れる環境は整っていないなあと。瀬戸内国際芸術祭で島が注目され始めていた頃でしたので、名所に看板を設置したり、昔の漁具や生活道具などを収集している民俗資料館などを整備しました。
─島の歴史や民俗にとてもお詳しいですね。
祖母や島の古老の話を聞いていると、いつの間にか江戸時代の話になっていくのが面白くて、興味を持ち始めました。伊吹島はイリコの島として有名ですが、昔はタイ網漁が盛んでした。戦前まで結婚前の女性が集団で四国八十八カ所を巡る「娘遍路」が行われ、話し方も京言葉に似たアクセントが入っています。また、島は火山岩の固い地質で形成されており、赤色安山岩の赤い地層や石門など、島の成り立ちを海から見ることもできます。
─島でお気に入りの場所はありますか。
真浦(まうら)港から県道を少し上がった小公園に、国語学者の金田一春彦先生が島に来られた時によまれた歌碑があり、そこからの眺めが一番好きですね。夏の朝、イワシ網漁の漁船が港から一斉に出ていく光景を見ると、島の元気さを感じます。会社員時代は生産性や効率を求められ、時間に追われていた分、島は時間の流れがゆっくりで「本当の豊かさとは何か」を考えさせられますね。
◆海の幸たっぷり 人気ランチは要予約
目の前に真浦港が広がる春日旅館。4代目女将の伊瀬初美(いせはつみ)さんが提供するランチ(800円)は、伊吹島近海で取れる旬の魚を使ったメイン料理に、小鉢が数品ついた人気メニュー。「時期によってはイリコの釜揚げを出したり、ご飯もイリコ飯やタイ飯になる時もあります」。
ランチは前日までに要予約。仕入れ状況によってはメインが肉料理や丼に変わることもあるそう。特に魚料理のランチが食べたい場合は3日前には予約が必要です。予算に合わせて刺身や天ぷらにすることも可能とのこと。伊吹島の海の幸を味わいたい方は、事前に予約を入れましょう。
■伊吹島
◯大きな椅子
島民によって作られた高さ約3.5mのアート作品。島の西側の海岸沿いにあり、白く巨大な椅子と目の前に広がる絶景は、SNSの映えスポットとしても人気。
◯石門
海水の浸食によって長い年月をかけて作られた石門。海底火山でできた伊吹島の様子を海上から見ることができます。陸上からは見えないため、海上タクシーや船をチャーターしてください。
◯伊吹産院跡(出部屋(でえべや))
島の女性が出産後の約1カ月間、母子だけで共同生活をするための場所で、1970年まで使われていました。現在は石の門が残っており、建物があった場所には、栗林隆が制作した瀬戸内国際芸術祭の作品「伊吹の樹」(表紙写真)を展示しています。
◯西の堂
旧暦の3月21日(4月下旬~5月上旬)に行われる島四国の最後にお参りする場所。堂内には戦前まで行われていた「娘遍路」の貴重な巡礼記念写真が多数残っています。
◯伊吹島民俗資料館
旧伊吹幼稚園を利用した島民手作りの資料館。長い年月をかけて収集された貴重な資料のほか、島の人たちが寄贈した漁具や生活道具、出部屋の中の様子を再現したセットなども展示しています。
◯〈芸術祭作品〉石井大五「トイレの家」
光や雨などの微小な事象に反応する特殊なトイレ。伊吹島の伝統行事や夏至の日、冬至の日の午前9時の太陽方位に合わせて、建物の中を一筋の光が通り抜ける仕組みになっています。
▼data
◯伊吹島(観音寺市)
人口:427人
面積:1.05平方キロメートル
(2023年10月1日現在)
《アクセス》
観音寺港から船で約25分
《島内の交通手段》
・徒歩
・のりあいバス(軽自動車)
問い合わせ先:
・観音寺市観光協会
【電話】0875-24-2150
・観音寺市伊吹支所
【電話】0875-29-2111
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