人生100年時代。認知症とともに生きることが当たり前の時代を私たちは生きています。
今年1月、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行されました。認知症の人が尊厳を保ち希望を持って暮らすことができるよう、国などが施策を推進し、認知症の人もそうでない人も、互いに人格と個性を尊重し支え合う社会の実現を目的としています。県内でもこのような社会の実現へ向けて、さまざまな活動が行われています。
■誰でも集える「認知症カフェ」
高松市仏生山町の「のほほんcafé」は、認知症の人やその家族らが気軽に立ち寄ることができる「認知症カフェ」です。代表の若林真由子さんが、看護師時代に多くの当事者やその家族と接した経験から、「みんなが楽しく元気になる場所をつくりたい」と、2021年に個人で認知症カフェを始めました。
活動は毎月1回。落ち着いた雰囲気の古民家に20人ほどが集い、介護予防体操で体を動かしたり、お茶を飲みながらおしゃべりしたり、リラックスした時間を過ごします。ほかに、かるたや絵本読み、当事者や家族による音楽演奏や料理教室など、参加者が主体的に楽しめる催しを行っています。家族も同じ立場で共通の話題を話したり、介護の悩みを相談する情報交換の場となっています。
■認知症だからと諦めないで
のほほんcafé代表 若林真由子さん
私は看護師時代、認知症の方らと関わることが多く、特に家族の方が誰にも相談できない状況を目の当たりにしてきました。中には、医療機関に来られた時には、認知症がかなり進行して、結局は施設に入所された方もいらっしゃいました。もし、身近に相談できる場所があればまた違ったのではないかと思っています。認知症カフェは、当事者らが人と関わることで「明日からまた頑張ろう」と思える場所になることを目指しています。たとえ認知症になったとしても、楽しく笑顔で過ごし、介護される方も自分の生活を大事にしてほしい。認知症だからと諦めたくない。私は可能性を信じています。
■カフェでのひとときが心の拠り所に
のほほんcaféに毎回参加しているマサヨシさん(80=仮名=)とエミコさん(79=仮名=)夫妻。オープン当初からの「常連さん」です。
マサヨシさんの定年後は、夫婦水入らずの日々を過ごしていました。エミコさんの異変を感じたのは5年前。物忘れがひどくなり、出したものを片付けられなくなるといった症状が出てきました。病院に行くことを勧めましたが、なかなか応じてもらえず、病院に行ったのは、気づいてから半年後。「医者から認知症と診断された時はショックで、先のことは考えられませんでした」。
悩んでいた時に、のほほんcaféのことを知りました。マサヨシさんは、同じ立場の人に失敗談や悩みを話すことで気持ちが楽になり、エミコさんとも向き合えるようになったと言います。料理が得意なエミコさんは、「のほほんcaféで、他の参加者と料理をしながらおしゃべりするのが楽しい」と話します。
「結婚してから、妻は私の転勤に付いて来てくれ、3人の子どもも立派に育ててくれた。今こそ恩返しをするときです」「主人が楽しく過ごしてくれるのが一番ですよ」。顔を見合わせ、いつまでも笑いが絶えませんでした。
問い合わせ先:長寿社会対策課
【電話】087-832-3271
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