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【特集】「時の納屋」あるく、みる、きく

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香川県さぬき市

さぬき市北端に位置する「大串自然公園」。大串半島活性化の中核として整備する施設の工事が令和6年3月末に完了しました。
施設の設計を手掛けた堀部安嗣さんとさぬき市の関わりを振り返り、建物の魅力に触れながら公園を巡りました。

■時の納屋
さぬき市小田2671番地75(大串自然公園芝生広場エリア内)
木造地上1階、地下1階建て延床面積198.74平方メートル

◆建築家・堀部安嗣にきく
〜主役は建物ではなく環境と景観〜

―初めて大串半島を訪れたときの感想や思い
これまで何度も瀬戸内海で仕事をやってきましたが、大串半島から瀬戸内海を見たとき、こんなにすばらしい場所があったのかと宝物を見つけたような気持ちになりました。
「時の納屋」は、大串半島の地形や自然環境を考慮し、訪れた人たちが瀬戸内海の風景を見てわくわくしながら建物にアプローチできるように設計しました。

―「時の納屋」が完成して感じること
これまでの大串半島と瀬戸内海は、陸と海の境界がはっきりと分かれていましたが、「時の納屋」ができたことで、瀬戸内海が敷地まで迫ってきたように見えると思います。このことで半島が多島美の延長になったように感じます。

―「時の納屋」の見どころ
建物に向かうメインアプローチ「時の小径」が見どころです。歩き始めるとわかるのですが、駐車場からは瀬戸内海は見えません。だんだんと歩みを進めていくと瀬戸内海が見え、建物の全貌が見えるようにしています。
メインアプローチの脇には、「裏の小径」という道を作りましたが、そこは飲食施設への従業員・搬入車が入るための道で、メインアプローチを歩く景観を楽しむ人の目につかないようにしっかりと分けています。
少しずつ瀬戸内海が見える期待感をぜひ楽しんでほしいです。

―地元の人たちや観光客にとってどんな場所になってほしいか
地元の人たちは、「瀬戸内海の美しさに気づいていないな」と感じます。主役は建物ではなく、あくまでも自然。環境や景観をいかし、国立公園にふさわしい姿に戻しながら、さぬき市民の居場所を作ることをテーマにしました。さぬき市民のみなさんが誇りを感じられる場所となること、遠方から足を運ばれた人たちの心の居場所が生まれることを願っています。

―「時の納屋」に込められた願い
ここでは、瀬戸内海の美しい風景を望むことができます。しばらく身をおくと、この場所で感じられる音が、風景をより印象付けてくれていることに気づきます。
海を行き交う船、飛びまわるトンビ、そして吹き抜ける海風。穏やかな風景と音に包まれ佇んでいると、今この「時」が深まってゆくように感じられます。
きっと太古の人々も、同じように風景を眺め、同じように穏やかな気持ちになったのではないでしょうか。そして、まだこの世にはいない次世代の人々にとっての原風景にもなるでしょう。
「納屋」その佇まいには素朴な強さと美しさを感じます。納屋には、外界から収蔵物を守るという、建築の原初的な役割が備わっているからです。
瀬戸内の風土を育んできた”これまで“の時間。ひとり、あるいは大切なだれかと過ごす今”この“時間。次世代の人々のための”これから“の時間。「時の納屋」には、そんな時や記憶を守り納める建物であって欲しい、という願いが込められています。

―大串半島活性化事業とは?
瀬戸内海国立公園内に位置し、芝生広場からの眺望に優れ、自然が豊かな大串半島に、新しい観光客を呼び込むため、閉鎖した大串温泉と宿泊施設(グリーンヒル大串)の跡地整備(「時の納屋」建設)を中心とした、さぬき市の新たな魅力発信拠点整備を進めているものです。
事業全体のコンセプトは、「半島の自然と人工物の調和・共生」「芝生広場に新たな付加価値を提供」「半島の中心部と、点在する観光資源との結節点の構築」の3つを掲げています。

■堀部安嗣(ほりべやすし)プロフィール
1967年神奈川県横浜市生まれ。
筑波大学芸術専門学群環境デザインコース卒業ののち、益子アトリエにて益子義弘氏に師事。
1994年、堀部安嗣建築設計事務所を設立。
2002年、[牛久のギャラリー]で第18回吉岡賞を受賞。
2016年、[竹林寺納骨堂]で日本建築学会賞(作品)を受賞。

■大串活性化施設「時の納屋」
令和6年6月30日(日)午後1時オープン

問合せ:商工観光課
【電話】087-894-1114

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