■語り継ぐ「稲むらの火」
~南海トラフ巨大地震の実話が伝える災害の記憶~(1)
○史実にもとづいた昔話
「稲むらの火」は江戸時代、ある男の機転により村人が津波から逃げられたという逸話ですが、戦前、戦後、そして21世紀になっても多くの人々に語り継がれ、防災の啓発に役立っています。災害の記憶を伝える大切さと、地震後の津波への警戒と早期避難の重要性を説いた物語です。歴史は繰り返すと良くいわれますが、この物語を通して私たちに、いろいろな意味で、何を伝え、何を教えようとしているのか、皆さんも改めて一緒に考えてみましょう。
この物語に出てくる、ある村とは紀伊国広村(現在の和歌山県有田郡広川町)、津波とは1854年の安政南海地震による津波のことです。主人公の五兵衛のモデルとなったのは、濱口梧陵という実業家でこの村の庄屋でした。五兵衛の偉業は、災害に際して迅速な避難に貢献したばかりでなく、被災後も将来再び同様の災害が起こることを考え防波堤を建設した点です。
これにより和歌山県広川町の中心部では昭和の東南海地震、南海地震による津波に際して被害を免れました。
この物語は、日本において津波に関する蔵書の中でも広く知られたものであり、発生が予想される南海トラフ東南海地震、南海地震などでの津波被害に対する防災意識を喚起する物語として注目を浴びています。なお、文中で取り上げられている「異様に潮が退く」「井戸の水が極端に下がる」といった現象は、津波の前に必ず起きるものではなく、津波が発生する時に見られることがある特異現象の一つであり、もしそのような現象を確認したら直ちに避難をすることが望ましいとされています。
問い合わせ:仁淀川町役場総務課危機管理室 防災アドバイザー 西森冨士夫
【電話】35-0111
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