このコーナーでは、何気ない日常で見つけた素敵なデザインを楽しみます。
▼日高村「見仏記」(日高村下分編)
今回は日高村の仏教関係文化財を紹介したいと思います。
▽習合
日高村で国指定の仏教関連文化財は重要文化財に指定されている平安時代の木造菩薩面(※1)で、お寺ではなく小村神社にあります。これは、明治時代の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)(※2)以前の神様と仏様が一緒にまつられていた(※3)名残で、小村神社の境内にも神宮寺(※4)というお寺があったという記録が残っています。小村神社には他にも県指定文化財で南北朝時代の仏教の大日如来を表す文字が針書きされた鎌倉時代の蓬莱鏡(ほうらいきょう)や、村指定文化財で一部彩色が残る木造菩薩面などの仏教関連文化財が残されています。
※1 悟りをひらく前の釈迦がモデルで、古代インドの貴族の格好で冠などの豪華な装飾品をつけ、髪も長く伸ばして、それを頭の上で結いあげている。
※2 明治時代に行われた仏像などを破棄し、仏教を廃する運動。
※3 日本土着の神道と仏教が融合し一つの信仰体系として再構成された宗教現象。
※4 小村神社の神宮寺は廃仏毀釈により廃寺になり、廃仏毀釈を逃れ残った受教院に旧神宮寺の檀信徒が帰入した。現在の神宮寺は旧受教院で後年、元神宮寺の檀信徒(だんしんと)が寺名改称を出願し神宮寺に改称したもの。
▽空飛
小村神社前駅の南にある神宮寺には村指定文化財で鎌倉時代の木造地蔵菩薩半跏像があります。菩薩ですが、お坊さんのように頭の髪を剃っています。地蔵菩薩は罪を犯した人々が死んだ後に落っこちた地獄のような世界を巡って、人々の代わりに苦しみを受け入れてくれる、そういう仏様です。この地蔵に関する話がいくつか伝わっており、その中には罪を償うためにこの地蔵を作ったというものもあります。その他、空を飛び光ったとか、家々を順番に廻し拝んでいたが(※5)九頭(くず)(※6)に持っていこうとすると石のように重くなり行けなかったなど不思議な話も伝わっています。
※5 別名、渡り地蔵(廻り仏)の由来
※6 仏像縁起の登場人物の一人の故郷
•参考資料
・令和4年度日高村文化財保存活用地域計画策定委託業務(概要調査)
・報告書日高村教育委員会「日高村史」1976年
・日高村文化財保護審議委員会「日高村文化財誌」1972年
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