夜空を飛び回り、昆虫を食べるコウモリ。これまで横倉山の調査で見つかったコウモリの中から、四国のあちこちでも見つかっている4種類を紹介します。
まずは、ニホンキクガシラコウモリです。体の大きさは鶏の卵くらい、顎の力が強く、鋭い歯を持っていて大きな蛾やコガネムシなども食べることができます。四国では4県で確認されていて、越知町内では横倉山をはじめ広い範囲で見つかっています。昨年の梅雨のころ、町民会館テニスコート横のトイレを数頭が利用するようになり、掃除の方から「糞が落ちて困る。なんとかならないか?」という相談を受けました。「日中もトイレ内の蛍光灯をつけておけば、来なくなりますよ」とお返事し実行されたところ、2~3日で来なくなったようです。
次は、コキクガシラコウモリです。ニホンキクガシラコウモリとよく似ていますが、体が小さくピンポン玉くらいしかありません。人の耳たぶのような肉ひだが鼻のまわりに菊の花のように発達していて、「菊の頭を持つ小さいコウモリ」ということで、この名前がついています。四国のあちこちにいるのですが、子育てをしている場所はまだ数カ所しか見つかっていません。冬眠は洞窟でします。体が小さいからか、ほかの種類のコウモリよりも気温が高い場所に集まる様子が観察されています。
3番目はモモジロコウモリです。体の大きさはコキクガシラコウモリと同じくらいです。太腿(ふともも)の色が白っぽく見えることから、この名がついています。水辺を好むコウモリで、広い川面や湖の上などの水面をかすめるように飛び回り、カゲロウやカワゲラなどを捕まえて食べています。仁淀ブルー体験博のラフティングで夜の川下りをすると、たくさんのコウモリが懐中電灯の光の中を飛んでいる姿をみることができます。おそらくモモジロコウモリだと思います。市山集落には、モモジロコウモリが集まる穴が見つかっています。
最後はユビナガコウモリです。体の大きさは成人男性の親指2本をならべたくらいです。手の指が長く、細長い形の翼をしています。とても速い速度で飛び回るコウモリで、森林の上の広い空間で昆虫を捕まえて暮らしています。大きな集団を作ることも知られていて、モモジロコウモリが見つかっている市山集落の穴では、初夏から秋の終わりころまで千頭くらいのユビナガコウモリが、集まる様子を毎年観察しています。ただし、この穴で子どもは見つかっておらず、子育てをどこでしているのかはまだ分かっていません。また、冬になるとこの穴からはいなくなってしまい、どこで冬眠をしているのかも調べているところです。
今回紹介したコウモリたちは、すべて森林で暮らし、昼間は洞窟で休み、そこで子育ても行う種類です。横倉山には広い範囲に石灰岩地帯があることから、大小いくつもの洞窟が見つかっています。また、かつてマンガンを採掘していた坑道跡、収穫した野菜を一時的に保存するため、掘られた穴などの人工的に作られた場所をコウモリたちが利用していることが分かってきています。
2回にわたって横倉山そして越知町に住むコウモリを紹介してきましたが、もう1回ページをいただいて、残りの1種類を紹介します。そのコウモリはアブラコウモリといって、別名イエコウモリともいいます。名前のとおり、人の家に住み着くコウモリで、ほかの種類のコウモリとはいろいろ違った生活をしています。
横倉山自然の森博物館学芸員 谷地森秀二
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