■ツワブキ
○眩しい黄色
花が少ない季節に、ひときわ明るく大きな花を咲かせるツワブキ。庭先や神社などでよく見かけるキク科の植物です。漢字では石蕗と書きますが、フキとはグループが違います。フキ属とツワブキ属で互いに親戚みたいな関係です。ツワブキは温暖な気候帯を好み、日本海側では佐渡島、太平洋側では福島県が北限とされています。現在、新潟県でのみ準絶滅危惧に指定されていますが、もしかしたら、近年の気候変動で北限がさらに北上するかもしれません。お隣の島根県では、ツワブキに関わる話題が多く、津和野町では「町の花」に制定され、島根大学出雲キャンパスの学祭名は「つわぶき祭」と呼ばれ、隠岐島の海士町ではツワブキロードがホームページで紹介されています。
○花言葉通り
ツワブキは複数ある花言葉の中でも「困難に負けない」という文言通り、特筆すべき逞しさがあります。冷たい潮風があたり、日差しが強い海辺から、里地の林内の日陰まで自生することができ、耐寒性を備え、多年草なので根が生きていれば、多少刈り取られてもすぐに枯れることはありません。そして、乾燥に強く水気の少ない岩場でも生育できます。蜜源が少ない季節に咲くので、様々なチョウやガやアブの仲間が集まり、賑やかなレストラン状態になりますが、虫たちにとっても、困難を乗り越えるための大事なエネルギー源になっているようです。
○食用にも!
この原稿を書くにあたり下調べをしていたら、多くの調理方法があることを知り、「しまった!去年ちゃんと味わっていればよかった!」と頭を抱えました。ざっとレシピを調べただけでも、肉巻き、佃煮、きんぴら、煮物、混ぜご飯、天ぷらと美味しそうな画像がいくつもパソコン画面に出てきました。しかし、山菜につきもののアクの処理は必須です。有毒成分のピロリジンアルカロイド類を含むので、必ず加熱する下処理をほどこしましょう。生薬名「たく吾(たくご)」という名で、根茎や葉を用いて、食中毒、下痢、打撲、火傷などの民間療法にも使われるツワブキ。想像以上にすごい植物でした。今年はぜひ料理してみたいと思います。
※「たく吾」の「たく」の字は環境依存文字のため、かなに置き換えています。正式表記は本紙をご覧ください。
自然観察指導員 桐原真希
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