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南部町のいきものたち(205)

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鳥取県南部町

■ジャコウアゲハ
◇縛られお菊さん
2008年のこと、落合のIさんから連絡がきました。近所のガードレールに変なモノがついていると。一体何があるんだろうと現場を見てみると、そこには「お菊虫」がくっついていたのです。正体はジャコウアゲハの蛹(さなぎ)。怪談「番長皿屋敷」の中で、お菊が後ろ手に縛られている姿と蛹の形が重ねられ、珍しく蝶の蛹であだ名がついています。その蛹周辺の草やぶには、黒と白の個性的なイモムシが何十匹もいるではありませんか。2002年当時に発行された「レッドデータブックとっとり」の初版ですでに準絶滅危惧として掲載されていた蝶だったので、目の前の大発生に大変驚きました。

◇庭においで!
ジャコウアゲハは4月には羽化し、黒いアゲハの仲間の中でも早くから姿を見られます。実は2017年春、我が家の庭に保全保護を目的として近所からウマノスズクサを移植しました。最初に蛹を確認した場所からなら、ジャコウさんがここまで飛んでくるかもと観察していました。すると予想通りしっかり産卵してくれたのです。しかし、他の株が近くにないのか、次から次へと葉っぱにオレンジ色の卵が産みつけられ、孵化したイモムシたちが、ウマノスズクサを何度も丸坊主にしてしまいました。それでも根が生きていればまた芽が出ますが、結局毎年50匹以上の幼虫が確認できても食べる葉がなくなり、そのほとんどが成長できないのです。

◇食草も絶滅危惧種
アゲハやクロアゲハなどは、ユズやサンショウなどのミカン科の植物の葉を食べますが、ジャコウアゲハの食草であるウマノスズクサも、現在、鳥取もふくめて10以上の都府県でレッドデータブックに掲載されている植物です。南部町でも十分に生えているところが少なく、わずかでも株があるところに集中して産卵され、結果生き残れる幼虫も少なくなっていることが伺えます。ヒガンバナの咲く頃まで産卵と蛹化を繰り返し、冬は蛹で乗り切るジャコウアゲハ。次のレッドデータブック改定で、食草と共にランクアップされないことを願っています。

自然観察指導員 桐原真希

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