5月号にて、降下した火山灰層から立切遺跡が3万5千年以前の遺跡であることを紹介しました。その火山灰層に注目して立切遺跡の土層断面(図1)を見ると、下からXIVa層に「種III火山灰」、XII層に「種IV火山灰」、X層に「AT火山灰」、III層に「アカホヤ火山灰」の4つの火山灰層が確認できます。
アカホヤ火山灰は薩摩硫黄島と竹島を外輪山とする海底火山鬼界カルデラから約7,300年前に噴出、AT火山灰は桜島をその一部とする鹿児島湾(錦江湾)海底にある姶良カルデラから約3万年前に噴出した火山灰です。種IV火山灰は3万5千年前、種III火山灰は3万8千年前の噴出物であり、その給源についてはいまだ不明ですが、鬼界カルデラ以南の火山から噴出したものではないかと考えられています。
火山の噴火と文章では簡単に書くことができますが、その堆積状況から噴火のすさまじさが分かります。現在でも桜島や口永良部島において小規模な噴火があり、降灰があります。2011年の霧島新燃岳噴火も記憶に新しいと思いますが、町や山が覆われるほどの火砕流や火山灰の噴出はありませんでした。しかし、立切遺跡で確認できるアカホヤ火山灰は30cm、AT火山灰は10cm、種IV火山灰は5cmと厚く堆積しています。これは噴火が長期的であり、かつ噴火と同時に高熱の火砕流・熱風が押し寄せ、その後大量の火山灰がこの地に降り注いだことを物語っています。これだけの大噴火となると巨大地震や大津波も起きていたことも考えられ、現在とは比べものにならない大災害であったことは間違いありません。
度重なる大災害に当時の人々がどのように対処していたか詳細は分かりませんが、噴火後も同じ地に文化が築かれているということは、逃げ延びた者がいたのかもしれません。
◆図1 立切遺跡土層断面図
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