■新たな学びの姿
坂元 先進校では、思考と入力を同時に行っている生徒の姿が見られました。入力しながら考え、考えながら入力することができていたようです。
渡邉 そのような学校では、考えることも鍛えられています。調べる・整理する・発信するなど、様々な段階において生徒主体で授業を進め、あちこちで考える場面があるので、考える力も同時に鍛えられています。思考力は考えることでしか身に付きません。思考しながら入力することで、入力が速くなる。そうすることで又、思考も入力も伸びるという相乗効果になっています。
坂元 GIGAスクール構想によって、ICT活用の環境が整備されたことで、授業がかなり変わってきたということですね。
渡邉 今までの自分の授業の進め方に、ICT活用を組み込んでいくという考え方ではなく、子供たちが1人1台端末を活用することが前提で授業づくりをしていかなくてはなりません。これまでの授業づくりの概念をリセットする必要があります。子供たちの学びが大きく変容していることから、授業をどのように組み立てるかを考えていくことになります。
坂元 「自立した学び」「自走する学び」という言葉がよく聞かれるようになりましたが、子供たちにとっても「学び方」が変わることになりますね。
渡邉 自己調整という言い方がありますが、自分でどれだけのことを調整できるか、その度合いが増えていくことになります。低学年でも複式学級においてガイド学習に取り組んでおり、子供たちが進行したり役割分担したりする場面があります。子供たちに任せ、子供たちが自分で決めていく場面をどんどん増やすことで、自己調整につながっていくと思います。
■今後の取組み
坂元 今後の垂水市の取組みとして力を入れていきたいのが「学びの保障」です。様々な状況に対応できるように、子供たちが学べる環境や態勢を整えておくことが必要です。現在取り組んでいる、オンラインによる遠隔合同授業なども計画的に進められるようにしたいと考えています。
渡邉 「いつでも、誰でも」という視点は大切ですね。各学校でそれぞれGIGAスクール構想の取組みを進めておられますが、どの先生も同じレベルではないと思います。今後は、「どの学校の、どの先生も活用してます」と言えるとすばらしいです。そのためには、授業について具体的に研修できる場が必要です。例えば、みんなで一つの授業を見て、授業づくりの具体的な方法について協議することができれば、1人1台端末の活用が更に進んでいくと思います。
坂元 組織はいろいろな方々で構成されており、それぞれの持ち味を生かしながら柔軟な発想でよい授業づくりができるとよいです。
渡邉 先生方の研修も、子供たちの学びと同じようにクラウドを活用して、みんなの意見を取り上げるようにしたいです。ベテランの先生の考えだけで研修を進めるのではなく、みんなの考えを共有しつつ、納得しながら授業づくりが進められると、みんなで新しい授業を考えることができます。
坂元 学校組織の在り方によって、授業の質を高めたり、業務改善につながったりしますね。そして、教師は生涯学び続けることが大切なのですね。
渡邉 それは間違いないですね。子供たちを学び続ける学習者にするには、教師がその姿を見せることが必要です。学ぶ姿にはいろいろありますが、教師が子供たちの学びを見て「すごいね」と思えるとよいですね。
坂元 そこには「楽しむ」というキーワードがあると思います。子供たちが自ら学んでいく授業を教師が楽しむ、そして、教師として人としての学びを楽しむことができるとよいです。
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