■垂水市指定文化財「高峠つつじ」
○垂水市の花
毎年4月下旬から5月初旬にかけて、群生する「サタツツジ」が見頃を迎える高峠つつじヶ丘公園は、標高550m(丘頂上部分722m)にあります。ツツジの密生総数は約10万本、種類は約100種に及ぶといわれます。
「サタツツジ」は、名前の由来となった南大隅町佐多には少なく、垂水市の高峠・南大隅町根占・指宿市開聞・鹿児島市桜島の4か所に群生地があるばかりです。その中でも高峠は、最も面積が広いうえに、本数・種類ともに秀でています。高峠のツツジの群生地は、他に類を見ない学術的に貴重なものであることから、昭和41(1966)年4月に、垂水市指定文化財に指定されました。この「サタツツジ」を改良したものが、「久留米ツツジ」とされます。
昭和34(1959)年、福岡県久留米市にあった農林省(現在の農林水産省)園芸試験場の田村氏が、久留米ツツジの原種研究のために垂水市を訪れました。高峠を視察後、市内の民家にあった白ツツジの種子と穂を持ち帰り研究した結果、「この白ツツジこそ、サタツツジの原種である」としました。この白ツツジは、市内の民家2軒で確認されていました。
昭和43(1968)年10月、市制10周年記念祝賀式典が開催されるに伴い、市の花の選定が行われました。市の花を決めるために設けられた専門部会では、「高峠ツツジ」「サザンカ」「サルスベリ」「サルビア」「ケイトウ」の五つの候補が挙がり、この五つの候補から、垂水市のシンボルに相応しいものをハガキに記入する市民アンケートを行った結果、「高峠ツツジ」が選定され、市の花となったのです。
市の花に選定された「高峠ツツジ」は、その後、成人式の記念品として新成人に贈られたこともありました。
昭和45(1970)年には、高峠のつつじヶ丘公園を含む観光資源等を生かした産業振興をはかる計画が持ち上がりました。そして、南大隅町の佐多岬から高峠、鹿屋市輝北町、霧島市福山町をつなぐ「大隅縦貫観光道路(仮称:ビシャゴスカイライン)」の建設調査を行うよう、関係各市町で結成した「キツネ丘観光連絡協議会(会長:当時の垂水市長町田四郎氏)」が県議会に陳情しました。
ツツジの名所として有名になった高峠。当地からスタートする「高峠つつじジョギング大会」が催されたこともありましたが、鳥インフルエンザ流行のため、中断されました。昭和54(1979)年には、約8万5千人の花見客が訪れ、駐車場は終日満車となる大賑わいもみせています。
平成24(2012)年3月、霧島錦江湾国立公園に、この高峠つつじヶ丘公園内のつつじヶ丘部分も含まれました。学術上貴重なばかりでなく、市の観光資源でもあるツツジを、次の世代へもつなげていきたいものです。
▽参考資料
『2000年鹿児島県垂水市勢要覧』
『郷土教材資料ふるさと垂水』
『ガイドブック大隅半島』
『市報たるみず』
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