2018年から6年の歳月をかけ行われた町誌編さん事業。2023年11月に発刊された「徳之島町史 通史編I・II」の刊行をもって、「徳之島町史」が全巻刊行となりました。島内外から約60名が委員として携わり、50年ぶりの刊行となった町誌。自治体誌では県内初となる「オールカラー」「自然編の単独刊行」など、「町民や徳之島出身者の方にも手に取って欲しい」と思いを込めて作られた、徳之島町史の魅力と、刊行までの歩みをご紹介します。
■「徳之島町史」完成までの道のり
2017年1月、町誌編さんの基本方針等を検討する「徳之島町誌編さん審議会」の条例が施行され、翌年2018年4月、「徳之島町誌編さん室」が設置されました。「町誌」とは、町や集落がどのように出来上がり、人々がどんな暮らしをしていたのか、これまでにどんな出来事があったのかがまとめられた本で、「編さん」は様々な調査・研究を行い本にまとめることです。
同年8月には第1回の町誌編さん審議会があり、新たな町誌の名前を「徳之島町史」とすることや、刊行する種類、専門部会設置等の基本方針が確認され、町史編さん事業は大きく動き出しました。また2018年は徳之島町政施行60周年となり、町誌編さん室編集による60周年記念誌が刊行されました。
2019年4月、島内外の様々な有識者が委員として委嘱され、調査や執筆を担う各専門部会が発足。その後聞き取り調査や資料研究、各部会での話し合いなど、コロナ禍の困難な状況を乗り越えながら、時間と労力をかけ地道な作業が積み重ねられました。その際に集まった貴重な記録は町誌叢書(ちょうしそうしょ)等の資料集としてまとめられ、計4冊が刊行されました。
そして徳之島が世界自然遺産に登録された2021年、第1弾となる「徳之島町史 自然編 恵みの島」が11月に発刊され、翌2022年3月には第2弾「徳之島町史 民俗編 シマの記憶」を刊行。2023年11月の「徳之島町史 通史編I(先史・古代・中世・近世)・II(近現代)」をもって全巻刊行となりました。
また、11月25日には町史刊行記念として、シンポジウム「ここまでわかった、島の自然と島っちゅぬ歴史」を開催。各専門部会長が町史編さんを通じた研究成果を発表する、節目のイベントとなりました。
○『徳之島町史 民俗編 シマの記憶』
地域に伝わる伝統や文化、慣習、伝承などの「民俗」に関する情報を、シマ(集落)の様々な「場所」に着目し、「シマの記憶」として掘り起こすことを試みた、町全集落の「まるごと事典」。新型コロナが猛威をふるい「人と会って話を聞く」という当たり前にできたことが制限される困難な状況の中、各集落を網羅的に調査。ドローンを用いた海岸調査でまとめられた「海の呼称」は特筆に値する。
○『徳之島町史 自然編 恵みの島』
鹿児島県内の自治体誌として、自然分野を単独で初刊行。徳之島の成り立ちを知る地質や岩石、多種多様な植物、陸の生き物、川や海の生き物たちを、豊富な写真や図を用いオールカラーで解説する、世界有数の自然を有する徳之島の自然ガイドブック決定版。「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界自然遺産に登録された2021年の記念刊行となった。
○『徳之島町史 通史編I 先史・古代・中世・近世』
鹿児島県内の自治体誌として、通史編を、口絵のみならず本文も含めたオールカラーで初刊行。世界の大小様々な島と、そこで暮らした人々に関する研究比較から浮かび上がる先史・原始時代の徳之島の姿や、約160年前の徳之島が描かれた「徳之島全図」から読み解く村々の特徴など、それぞれの時代に人々がどのように暮らしたのか、最新の研究をもとに編さん。
○『徳之島町史 通史編II 近現代』
「徳之島町史通史編I」と同時刊行。社会経済史を軸としつつ、「亀津断髪と学士村」など、徳之島町域の特徴的な歴史について詳述。近現代における徳之島町の様々な事象を取り上げる「テーマで見る徳之島町」の章も設け、通史編1.と同様にコラムも充実。徳之島の大きな変革期として本編にも掲載されている「奄美群島日本復帰」から70周年を数える記念刊行となった。
「徳之島町史」に関するお問い合わせは、徳之島町郷土資料館内の町誌編さん室(【電話】0997-82-2908 生涯学習センター3階)へお尋ねください。
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