■マグネシウムと健康
◇今月のドクター
指宿医師会
上村 徳郎(うえむらとくろう)
あまり知られていない重要な電解質「マグネシウム」のお話です。
このマグネシウムは不眠やストレス、疲労や意欲低下などさまざまな症状と関連しています。脳から分泌される睡眠ホルモンであるメラトニンという物質があるのですが、その原料はセロトニンであり、そしてセロトニンはマグネシウム、ビタミンB6、ナイアシンの存在下でトリプトファンから合成されます。つまりマグネシウムが不足していると睡眠ホルモンがうまく作られないのです。
またセロトニンは脳内の神経伝達物質の一つで、ドパミン・ノルアドレナリンを制御し精神を安定させる働きをしています。よって、セロトニンが不足するとストレスや疲労・イライラ感・意欲低下・うつ症状・不眠といった症状がみられます。マグネシウムが不足するとこういった症状もみられるようになるのです。
ストレス自体もマグネシウムを減らしてしまう原因となることが知られています。これは尿中へのマグネシウム排せつ量が増加することなどが原因と考えられています。
マグネシウム不足には気を付けたいところですが、私たちは普段、マグネシウムを食べ物から摂取しています。藻類・魚介類・穀類・野菜類・豆類(青のり・わかめ・ひじき・しらす・あさり・発芽玄米・そば・えだまめ・ごぼう・木綿豆腐など)に多く含まれており、海産物に多いのです。これは海水にマグネシウムが豊富に含まれていることに由来します。戦前の日本人は粗食でしたがマグネシウム不足の人はほとんどいませんでした。雑穀や海産物をよく食べていましたし、今とは「塩」が違います。現在の塩は精製された物なのでミネラルがほとんど含まれていないのですが、昔の塩は海水を濃縮して作っていたのでマグネシウムが豊富だったのです。
マグネシウム不足は現代病とも言えます。また薬剤による低マグネシウム血症もあり、特にプロトンポンプ阻害薬(胃薬)では米国食品医薬品局が「1年以上の長期使用は低マグネシウム血症のリスクがある」と注意喚起しています。
定期的にマグネシウムの測定をしましょう。まずは、きちんとした食事がマグネシウム不足を防ぐ第一歩です(腎臓病の方やサプリメントの取り過ぎでは高マグネシウム血症にも十分な注意が必要です)。マグネシウムはメタボリックシンドロームや心臓病、コレステロールとも関連があるといわれています。食事を中心にマグネシウムにも気を付けてみましょう。
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