■ゲートキーパーへのアドバイス
◇県内の現状について
厚生労働省の令和4年人口動態統計を見ると県内の自殺者のうち60歳以上の高齢者が約半数を占めています。高齢者の自殺の原因・動機として「健康問題」が最も多く、それは体だけではなく、うつ病などの精神に関する病気の悩みも少なくありません。加えて近親者の死別などの喪失体験もあります。また、高齢者の自殺は同居人がいる場合の方が多いことに注意が必要です。その背景には老老介護の問題や「家族に負担をかけている」「居場所がない」などの家庭問題・経済・生活問題があります。
◇高齢者のうつ病・うつ状態
うつ病・うつ状態の早期発見・早期治療は高齢者の自殺予防にとても大切です。しかし、その症状は気付かれにくいです。それは気分の落ち込みや悲哀感よりも不安や焦燥感、身体的不調の訴えが目立ち一見するとうつ病・うつ状態のように見えないことがあるからです。また、意欲や活動量の低下や、物忘れを訴えることもあり認知症と間違われることもあります。もし、いつもと違う様子や不眠が続く場合はうつ病・うつ状態を疑って早めに相談機関や医療機関につなぐことが大切です。
◇私たちができること
いつもと違う様子に気付いたら勇気を出して声を掛けてください。こちらから声を掛けて初めて悩みを話すことは少なくありません。まずは相手の気持ちに寄り添ってじっくり話を聴くことがポイントです。また、「つらい状況では死にたいと考える人もいますが、あなたは死にたい気持ちはありますか?」などと死にたい気持ちの有無を確認することが自殺の危険性を知るために必要です。なお、死にたい気持ちの有無を確認することで自殺の危険性が高まることはなく、むしろ誰にも話せない状況の方が危険です。もし「死にたい」と打ち明けられたらまずは自分自身の気持ちを落ち着かせることが必要です。感情的になって叱ったり、自殺の是非を言い争ったり、安易に励ましたり、話をそらしたりせず、死にたいほどつらい状況に耐えてきたことをねぎらい、勇気を出して打ち明けたことに感謝を伝えてください。その時「他の人には秘密にして」と言われても約束せず、相手を心配していること、死にたいほどつらい状況を自分1人で抱え込まず、みんなで解決する方法を考えたいことを伝え、家族や相談機関・医療機関の専門職と共に対応を考えるようにしてください。もし自殺の危険性が高いと思ったら1人にせず安全を確保し、周囲の人と協力して対応して下さい。各機関につないだ後も本人を温かく見守り、孤独感を軽減する働きかけが自殺予防に有効です。
最後になりますが、私たち一人一人が自殺を防ぐためにできることを行い、誰も自殺に追い込まれることのない社会が実現することを願っております。
鹿児島県精神保健福祉センター
所長 春日井 基文(かすがい もとふみ)さん
【学歴】
平成13年鹿児島大学医学部卒業
【資格・称号】
精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・専門医指導医・鹿児島大学医学部臨床教授
【職歴】
慈愛会谷山病院、県立姶良病院を経て鹿児島大学病院神経科精神科で勤務。外来医長、病棟医長、医局長を務め、講師として臨床・教育・研究に従事。令和4年4月から鹿児島県精神保健福祉センター所長。
問合せ:健康増進課健康指導係
【電話】22-2111(内線)282
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