食事の後、食べかすの中で細菌が約8時間で繁殖して歯垢になるといわれています。歯垢は細菌の塊なのですが、この歯垢が慢性的な炎症を起こし、サイトカインという炎症物質が誘導されることで、血糖を下げるホルモンであるインスリンの働きを阻害してしまいます。そのために血糖が下がりにくくなり、インスリン抵抗性が上がってしまい、糖尿病になりやすくなります。
一方、2型糖尿病の患者さんは、糖尿病ではない人と比較して歯周病発症率が2.6倍高いといわれています。糖尿病の患者さんは浸透率利尿のため脱水になり口腔内(こうくう)が乾燥するため、細菌が増殖しやすい環境を作ってしまいます。さらに、唾液に含まれる糖分も増えるため、栄養が豊富な環境で細菌がよりいっそう増殖し、虫歯はもちろん、口腔内の炎症も進んで歯周病を発症しやすくなります。
このように、糖尿病と歯周病はお互いに悪さをし合い、負のスパイラルを作り出して症状が悪化していくのですが、どちらかを改善すると、もう片方も改善されるという結果もあります。例えば歯周治癒を行った3~4カ月後、糖尿病リスクの指標となるHb-A1c(ヘモグロビンエーワンシー)の数値が統計学的にも優位に改善されるという結果もあるようです。糖尿病の予防には運動することや生活習慣を是正することなどがありますが、まずは家で手軽にできる食後と就寝前の歯磨きを習慣にすることから始めてみてはいかがでしょうか。
糖尿病は昔から現代に至るまで世界共通の生活習慣病であったらしく、最古の記録としは古代エジプトのパピルス文書があり、また、記録に残っている最古の日本人の糖尿病患者は藤原道長であるようです。
糖尿病の総患者数は現在も増え続けており、歯周病とは一見何の関連性もないようですが、病気を治癒する上で切っても切れない関係なのです。
今月のドクター:指宿市歯科医師会 日髙 一郎(ひだか いちろう)
問合せ:指宿市歯科医師会
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