■国内初発見!一宇治城跡出土「龍の文様のある粉青沙器(ふんせいさき)」
日置市教育委員会社会教育課文化係
日置市伊集院大田の山城「一宇治城跡」では、龍の文様をもつ粉青沙器の破片2点が見つかっています(「ひおき歴史街道」No.19・20参照)。粉青沙器とは、李氏朝鮮時代(1392〜1897)の象嵌青磁で、器の表面に文様を刻み、そこに赤土や白土を埋め込み、釉薬をかけて焼き上げたものです。平成2年(1990)の発掘調査で出土したものですが、令和2年(2020)に本市教育委員会職員が改めて調査したところ、韓国国立中央博物館所蔵の完形の壺「粉青沙器象嵌雲龍文壺」の龍の文様と酷似しており、一宇治城跡出土の粉青沙器も、15世紀の李氏朝鮮時代のものとみられ、白や黒の象嵌で龍の鱗や鰭を描いた大型の壺、または瓶であることが分かりました。こうした龍を描いた韓半島(朝鮮半島)の粉青沙器の壺・瓶は、日本国内では、初の発見である可能性が高いものと思われます。
中世、一宇治城を拠点とした伊集院氏や島津氏は、朝鮮・中国・琉球と交易を行い、その拠点となる要港を掌握していたことが知られています。また、一宇治城では、粉青沙器のほか、青磁や白磁、天目茶碗などの貿易陶磁器も出土しています。今後、城跡の調査とともに出土した貿易陶磁器の入手経路などが明らかになれば、南九州と東アジアとの海外交流の歴史の解明にもつながるかもしれません。
※2018年にユネスコ世界文化遺産に登録された「山寺(サンサ)―韓国の山地僧院」の構成資産の一つ「鳳停寺」(ほうていじ/ポンジョンサ:慶尚北道安東市)の伝来品で、15世紀前半の李朝前期のものとされる。韓国国宝第259号。【参考資料】『鹿児島県史』(同県1939)、『一宇治城跡』(旧伊集院町教育委員会1991・1994)、福島金治氏『戦国大名島津氏の領国形成』(吉川弘文館1988)、関周一氏「唐物の流通と消費」(『国立歴史民俗博物館研究報告』92・同館2002)、下小牧潤氏「象嵌・鰭文様のある粉青沙器について―鹿児島県日置市一宇治城跡出土資料の検討とその意義ー」『日本情報考古学会講演論文集』25・同学会2022)
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