文字サイズ
自治体の皆さまへ

市長独言No.86…港町再生の羅針盤

11/22

鹿児島県西之表市

青い表紙の真新しい「西之表市史」の頁をめくり、最終氷期(約7・5万年前〜1・5万年前)の種子島を想像しました。大陸に氷河ができ、海水面は今より百メートル以上下がっていたので、大隅半島とは陸続き、馬毛島や屋久島ともつながっていました。旧石器人が生活していた約3・5万年前には海水面がやや上がり、大隅海峡ができましたが、種子島、馬毛島、屋久島は一つながりの島だった可能性があるそうです(上巻 第一編 自然)。
本市はこれまで、歴史や民俗、自然、行政史をまとめた自治体史を発行していませんでした。今回の編さんは、明治時代以降に絞った「西之表市百年史」や島主・種子島家の記録「種子島家譜」など先人の遺産を受け継ぎつつ、未記述の領域を綴る狙いがありました。
例えば、住吉・形之山で発見された象の骨の地層が130万年前のものだとか、古墳のつくられなかった島の埋葬遺跡のこと、律令国家の地方行政機関だった多褹嶋(たねとう)が廃止され、大隈国に併合された時代のことなど数々の事実を整理して紹介しています。
全編読破はまだ先ですが、個人的に興味をひかれる一つは、中世から近世にかけての種子島と琉球との交易・交流。赤尾木港を出帆した船頭たちの活躍や、エラブウミヘビを獲るために久高島の漁民たちが種子島に来島したことなど、新資料発掘も交えて、歴史を身近に読ませます。
市制施行60周年を記念して5年間をかけた上下巻は計約2000ページ。先史時代から現代に至る通史に市内12校区の校区史を加えたのが特徴の一つです。
市史は郷土への誇りを高め、今を生きる人々の心の糧となり、子孫の未来を照らす鏡となるはずです。市制施行の1958(昭和33)年頃には、現在の倍以上の約3万4000人の人口がありました。あの頃の活気を思い浮かべ、「港町再生」の羅針盤になると期待しています。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU