◎10月10日は「目の愛護デー」
近年、近視の人が増えています。目の愛護デーをきっかけに、
視力低下や目の不調の要因を知り、目をいたわることについて考えてみませんか。
人が得る情報の約8割が視覚によるものといわれています。スマートフォンなどのデジタルデバイスの普及に伴い、そんな大切な目の健康が脅かされ、特に若年層の視力低下が深刻化しています(グラフ)。裸眼視力の低下はどんな仕組みで引き起こされるのでしょうか。
■大切なのは視距離
暗い場所で本を読むと目が悪くなる、という話を聞いたことはありませんか。「目を酷使するイメージからそういわれてきたのかもしれませんが、この行動が必ずしも視力低下につながるとは言えません。実は、近視を招く特定の行動や環境は証明されておらず、今も世界中で研究されている段階です」と話すのは、鹿児島大学病院助教の中澤祐則(まさのり)さん(51)です。「これまでの研究によると、対象物と目の距離が視力低下の要因の一つになるのではないかと考えられています。見ている対象物と目の距離を視距離といいますが、この距離が近いと目にかかる負担が大きくなることが分かっています」と中澤さんは続けます。このような研究がなかった時代の人たちも、暗がりでの読書は文字をよく見るために視距離が近くなる、つまり目に負担がかかるということを実感していたのかもしれません。
■近視と遠視の仕組み
目に入った光は網膜を経由して脳に伝わり、映像化されます。焦点が合うべき場所が網膜から離れてしまうと、物を見る力が弱まります。焦点が網膜より手前であれば遠くがぼやける近視、奥に位置すれば遠くも近くもぼやける遠視になります。それでは、なぜ近視や遠視が生じるのでしょうか。
「焦点の位置が変わってしまう要因は眼球の大きさにあります。眼球は体の成長とともに大きくなります。何らかの原因で適当なサイズより大きくなってしまえば近視、小さければ遠視になる」と中澤さんは説明します。
眼球の大きさにばらつきがある理由については、栄養状態や遺伝が関係しているのではないかと考えられています。
■全国中学生の裸眼視力1.0未満の割合とスマートフォンの普及率
■スマホ老眼
スマートフォンを長時間使用した後で別の物に目を向けたとき、見えづらいと感じたことはありませんか。近年増加しているこの症状は、一般的にスマホ老眼と呼ばれています。「医学用語ではないので定義はさまざま。老眼というキーワードが入っていても、近視の人や若年層でもこのような状態になる場合があります。スマホ老眼に限っては、スマートフォンが原因であるといえ、やはり視距離が関係しています」と中澤さんは話します。「例えば本を読むとき、本と目の距離は一般的に30センチといわれています。しかしスマートフォンの場合、その距離は20センチに縮まります。その距離で画面を見続けるとピントが固定されてしまい、別の物を見たときにピントが合いづらくなるというのが、スマホ老眼の理屈です。たった10センチの差ですが、目にかかる負担が大きくなるだけでなく、目が内側に寄ってしまう内斜視につながる恐れもある」と警鐘を鳴らします。
デジタルデバイスの普及が進む昨今。「今後、デジタルデバイスの扱い方が視力低下にどう関わっているのか研究が進むでしょう」と続ける中澤さん。画面との視距離を離し小まめに休憩するなど、目に優しい付き合い方を考えてみることが大切です。
《目の仕組みと屈折異常》
▽正視眼
目は小型カメラに似ており、細かな光学的なパーツで構成されています。前方にある角膜と水晶体はレンズにあたり、後方にある光を感じる神経の膜(網膜)に焦点を合わせることで、ものが見える仕組みになっています。
近視や遠視など、正視眼以外の状態を屈折異常眼と呼びます。
▽近視
調節力を働かせない状態で、平行光線が網膜より前に焦点を結んでしまう状態です。
▽遠視
調節力を働かせない状態で、平行光線が網膜より後ろに焦点を結んでしまう状態です。
▽乱視
乱視の主な原因は角膜や水晶体のゆがみによるものです。
※詳細は本紙PDF版3ページをご覧ください。
(公財)日本眼科学会ホームページ「近視・遠視・乱視」を基に作成。
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