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【郷土史への扉】仮面文化

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鹿児島県霧島市

すっかり定着した感のあるマスクは、花粉が舞うこの季節もまた、手放せない人が多いのではないでしょうか。有害なものが体に侵入するのを防ぐマスクは、和訳すると「仮面」。霧島には特徴的な仮面文化があります。

■南九州の仮面文化
南九州(鹿児島・宮崎南部)の神社などには大量の仮面が残っていて、全国的に見ても仮面が濃密に分布する地域だといわれています。舞や踊りなどで使われ、人が着ける用途で使う芸能面も多いのですが、南九州の特徴的なものとして、神社に奉納されて壁などに飾る(※1)信仰面があります。信仰面は神社の壁や柱などに掛けられ、恐ろしい表情で魔を払うものだと考えられています。特に霧島市内の神社には、個性が際立つ仮面が多くあります。

■安良(やすら)神社の仮面
県内にある信仰面の中で最も古いとされるのが、横川町上ノの安良神社に伝わる仮面です。奉納されている12枚の仮面のうち(※2)阿吽形(あうんぎょう)の二つには貞和(じょうわ)5(1349)年の銘があり、記銘のある物としては県内最古です。もともとは神社の社殿を改築した際に入口に掲げたと考えられています。県の文化財に指定され、現在は横川郷土館で展示しています。

■止上(とがみ)神社の面
国分重久にある止上神社は県内で最も多い51点もの仮面を所有していて、全国的に見ても非常に珍しい事例です。そのうち38点が信仰面で、古い物では明応4(1495)年の物があります。戦国時代から江戸時代初期に作られた物が多く、中には絶対に顔には着けられない大型の面もあり、迫力があります。現在は国分郷土館に寄託、展示されており、ずらりと並ぶさまざまな仮面は圧巻です。

■九面(くめん)
市内の神社の面で特に有名なのは、霧島神宮に奉納されている九つの面である「九面」ではないでしょうか。江戸時代に奉納された物で、面によっては制作年や制作者の銘があり、かつては霧島神宮の社殿内に掲げられていました。
お金や物事のやり繰りをする「工面(くめん)」と音が通じていることから、商工業者に特に信仰され、社号や商品名などで九面の名を使用している業者もあります。霧島神宮のお守りのデザインや周辺の橋の欄干にモチーフとして使われたり、霧島九面太鼓では複製の九面を着けて演奏したりと活用されています。このように、市内の神社には古くて珍しい面が数多く奉納されています。いまだ地域の神社の中に残っている物も多くあると思われ、外から魔が入らないようにその勤めを果たしているのでしょう。現代のマスクも霧島の仮面も、外からの災いを防いでくれる大事な存在です。
(文責=小水流)

(※1)面の分類は『国分郷土誌』の分類方法による。
(※2)阿あ形ぎょう(口を開けている形)と吽うん形ぎょう(口を閉じている形)の二つで一対のもの。

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