介護予防と聞くと、まだまだ自分には関係ないと思う人も多いのではないでしょうか。
超高齢社会の問題が深刻さを増す中、私たちは何をすべきなのかを考えます。
■霧島市の人口構成(令和5年7月1日現在)
「これからの時代、今と同じようなケアを受けることは難しくなるかもしれません」と警鐘を鳴らすのは、市高齢者施策委員会で委員を務める八田(やつだ)冷子さん(68)です。
介護が必要な人を社会全体で支えるため、平成12年に創設された介護保険制度は現在、時代の流れと多様なニーズに対応しながら大きく変化しています。
令和7(2025)年には団塊の世代全員が後期高齢者に、令和22(2040)年には団塊ジュニアの世代が65歳以上となり、高齢者人口が最も多くなると推計されています。本市においても高齢者人口はますます増加し、人口減少と相まって高齢化率の上昇が続くことが予想されています。
「一般的に、85歳を超えると要介護認定を受ける人の割合が急増します。霧島市でも、介護の担い手不足の影響は計り知れません」
■介護予防とは
介護予防とは、要介護状態になることを防いだり遅らせたり、要介護状態になったとしても悪化を防ぎ、軽減を目指すことです。介護保険法では、要介護状態になることを予防するため自ら健康の保持増進に努め、要介護状態となった場合でも進んでリハビリなどのサービスを利用して生活機能の維持向上に努めるよう規定されています。
「要介護状態になってからでも努力次第で改善を目指せますが、そうなる前から介護予防を意識し、取り組むことが重要です」と八田さんは力を込めます。
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■地域とつながる
介護予防といっても、単に運動機能や栄養状態などの維持・改善を目指せばいいというものではなく、地域とつながることが鍵だと八田さんは訴えます。「東日本大震災の直後から、絆という言葉が日本中に広がり、私たちの生活と密接になりました。人が本当に困ったとき、ちょっと声を掛け合える関係が身近にあることが大事です。とはいえ、月に1回ほどの声掛けだけでは、安否確認にはなっても地域とつながるというところまでは至らない。高齢者研究では、少なくとも1週間か2週間に1度会えるような場が必要だと考えられています」
■目標を持って生きる
病院や施設でリハビリなどを受けることは、運動機能を維持・改善する点で有効ですが、つらいリハビリや運動に継続して取り組むことは決して簡単なことではありません。
「一人一人が生きてきた背景も違い、好きなものも違う。人との関わりの中で感情が生まれ、目標もできます。例えば友達とおいしい物を食べに行きたいとかゲートボールをしたい、旅行に行きたいといった目標を持つだけでも、そのために努力したくなりませんか。経験を生かして近所で農業を教えたり、できるうちは支える側として介護の仕事に従事したりと、社会貢献が自分の介護予防につながる人もいます。住み慣れた地域の中で週に1回だけでも交流の場に足を運んだり声を掛け合ったりすることが、予防としていかに大切なのかを知っていただき、元気なうちに実践してほしいと思います」
市高齢者施策委員会委員
八田(やつだ) 冷子さん(68)
横川町出身。県看護協会会長。週末は夫が営むそば屋で女おかみ将として店を切り盛りする。日置市在住。
《INTERVIEW》
▽地域の未来に安心を
嘉祥園 介護福祉士
笛田 美優(みゆ)さん(20)
福祉施設で働く祖母が身近にいたおかげで、幼い頃から福祉や介護の仕事に興味があり、人の役に立ちたいと思っていました。利用者さんからのありがとうの言葉がとてもやりがいにつながる仕事ですが、介護職は人手不足が深刻。当施設でも、特定技能実習生の方に頑張っていただいています。頼もしい先輩方も、いつかは卒業の時期がきます。10年後20年後にもこの地域の高齢者のよりどころとして在り続けられる施設を目指し、これからも頑張ります。
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