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【郷土史への扉】建物の履歴書 〜棟札(むなふだ)〜

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鹿児島県霧島市

建物が建てられると、施主や施工者の名前、建築(上棟)年月日などを書いた木の札を屋根裏に納めることがあります。棟札(むなふだ)と呼ばれ、多くの場合は上部が三角にとがった細長い木の板で、屋根裏の梁はりや柱など高い場所に打ち付けたり、結わえたりします。天井ができると見えなくなるため忘れられがちですが、建築年など建物についての情報が分かるので、建物の履歴書ともいえる大事な物です。

■神社の棟札
棟札は新築ばかりでなく、修理を行った際にも作られます。神社など古い建物の歴史を知るには有力な資料です。複数の棟札が保存されている場合も多く、縦長のほかに横長のもの、梁や天井板などに直接書いた墨書として残っていることもあります。携わった人の役職や名前、工事の経緯などが書かれており、どのような工事が行われたのかを知ることができます。
例えば、正徳5(1715)年に造られた霧島神宮の現在の社殿は、残っている棟札から享保15(1730)年に屋根のふき替えが行われ、さらに塗師の名前が書かれていることから、漆塗り工事も行われたことが分かります。
鹿児島神宮では、本殿横にある四所神社も神宮本殿と同じく宝暦6(1756)年に建てられたことが棟札により確認され、重要文化財指定につながりました。
霧島神宮も鹿児島神宮も、棟札が社殿の価値を証明するものとして高く評価され、棟札自体も国宝、重要文化財の「※附(つけたり)」指定となっています。

■「旧田中家別邸」の棟札
福山町にある県指定文化財・旧田中家別邸の棟札も、建物と共に文化財に指定されています。
関西財界の重鎮として明治末から大正期にかけて活躍し、私財を投じて私立福山中学校(福山高校の前身)を創設した福山町出身の田中省三により、大正8(1919)年に別邸が建てられました。純和風建築の中に洋間を取り入れた大正時代の特徴をよく表し、費用を十分にかけて造られたこの別邸も、わざわざ大阪から大工の棟梁を呼び寄せて造られたことが分かっています。
県の文化財指定に当たっても、棟札によって建築時期、施主・施工者、建設事情が分かることが大きく評価されました。

■「高木家住宅」の棟札
隼人町にある市指定文化財・高木家住宅は、現在の南日本銀行の前身「鹿児島無尽」の創業者・高木時吉が建てた、洋館や石倉を併設する邸宅です。県内でも民間のものとしては随一の規模で、日本建築の洋風化の過程を示す貴重な近代和風建築です。棟札により昭和2(1927)年に建てられたことが分かっています。
高木家住宅は現在、鹿児島神宮の敷地内に移築工事中です。棟札は隼人歴史民俗資料館に一時的に保管・展示され、工事の完成を待っています。移築工事が完了すると再び屋根裏に戻り、高木家住宅の行く末を見守ることになります。今の期間だけ見ることができる高木家住宅主屋の棟札を、見に行ってみてはいかがでしょうか。
(文責=堀之内)

※文化財の価値を証明する物、もしくは根拠となる物として、文化財本体と併せて文化財指定すること。

■高木家住宅の棟札を見に行こう
場所:隼人歴史民俗資料館(隼人町内2496-1)
入館料:小中高生90円、大人180円

問合せ:隼人歴史民俗資料館
【電話】43-0179

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